三角屋根の下で 君と

夢にまで見たファーストキス‥‥

その相手が泱だとは思ってもみなかっただけに、呆気なく終わったその行為は想像とは違い、漫画の主人公のようなトキメキに包まれた感情も沸かなかった

夢‥見過ぎてたのかな‥‥

何処か意地悪にも呆れたようにも思える笑い方をした泱が、訳がわからずボーッとする胡桃のオデコをデコピンすると、ハッとした胡桃は慌ててオデコに手を当てた

『さ、帰るぞ』

「うん‥‥」

帰り道、いつもと変わらない泱に、最初はどう接しようか迷っていた胡桃だったが、深く追求することを辞めたのは明日の試合をまずは怪我なく無事に終えて欲しかったからだ

本音を言えば、何であんなことをしたのかとか、俺のことを考えてろとか色々聞きたいことはあるけど、私の唇に残された余韻以外は忘れることにした


『お前の弁当めっちゃ美味そうじゃん!』

試合当日、凛が今朝渡していたお弁当に、部員が円を描くように群がり覗き込んでいた

凛‥‥昨日早く帰って、きっと沢山仕込んだりしてたのかな‥‥

泱のお母さんともよく3人でクッキーやケーキを焼いた事があるけれど、その時も凛は手際良く仕上がりが綺麗な焼き菓子を作ってたっけ‥

マネージャー3人で体育館の隅でお弁当を食べながらその様子を眺めていると、泱がこちらを見た気がしたので目を逸らしてしまった

『成田君、女子だけじゃなく男子にも人気ね。
 あのルックスで優しいときたら仕方ないか。
 2人は幼馴染みなんでしょ?恋心とか沸かな
 かったの?』

ドキッ

胡桃は意図的に泱のことを考えないようにしていたのに、先輩の一言で昨日のキスの事を思い出してしまい思わず喉におかずを詰まらせむせそうになった