三角屋根の下で 君と

「あのさ‥‥最初はマネージャーの仕事
 失敗するかもしれないけど大目に見て
 くれたりする?」

デスクに恥をつきながらニカっと笑う顔に、
泱は幼い頃自分に何度も見せてくれた笑顔を
思い出した

人前では絶対泣かない胡桃は、空手の試合に負けた時、この部屋で声を押し殺して泣くのを
見た事がある

それでも俺が試験に受かれば、俺以上に喜んでくれて、悲しい素振りは絶対見せなかった

『胡桃が努力家なのは知ってるよ‥‥。
 怒るわけないだろう?』

「良かったぁ‥‥でもやるからには当たり前
 だけど、少しでも迷惑かけずに頑張りたい。
 更科先輩って厳しそうだけど、部員のこと
 一番に考えててカッコいいなって思えたか
 ら、私も近づけるようにまずは観察しないと
 ね。泱が安心して集中してプレーできる
 環境作れるといいな。」

今日殴り書きしたであろうメモには、余白がないほど沢山聞いた事が書かれていて、隣の泱を他所に丁寧な字でメモに纏める姿を静かに隣で見守る

こういうとこなんだよな‥‥

自分の短所もちゃんと分かってて、結局は
自分の為よりは誰かの為に動こうとするとこ‥‥そんな姿を何度もなんども見るうちに
胡桃が特別な存在になっていったのだ

『胡桃』

「ん?」

『‥‥胡桃のこと‥‥手放せないわ。』

「はぁ?何それ。ハハッ‥‥手放せないなら
 悪さしないようにでも見張ってるといいよ」

『フッ‥‥そうするか。』

今は気持ちが伝わらなくてもいい‥‥
泱の気持ちはそんな少しのことでは変わらない
くらいずっと彼女を思い続けて来たのだ。

ポケットにしまった凛からのプレゼントの
事を考えないわけにはいかなかったが、
今はただ隣で頑張る胡桃にエールを送りたかった