色褪せて、着色して。Ⅶ~カンパニュラ編~

「まさか、ルピナス様は、ローズ様のお子様…」
 口に出して、「ひぃっ!」と驚きの声が漏れる。

 そんなことある…?
 もう、昼ドラ展開すぎる。
 ショックすぎて涙が目にたまる。
「いやいやいや。ルピナス様は正真正銘、蘭様とカレン様の子供っすから」
 太陽様は両手をぶんぶんと振った。
「ルピナス様はローズ様の幼い頃にそっくりだから。前国王の側近たちが勝手に思い込んでいるだけで。そもそも、あいつらは蘭様の幼い頃を知らねえわけだし」
「そういえば、蘭様はスペンサー侯爵家の養子でしたもんね」
 ふう…と息を吐くと。
 目元にたまっていた涙をぬぐった。
 心臓に悪い。

「まあ…ルピナス様の行動も悪いと思うんすよね」
「はい?」
 思わずマヌケな声が出る。
「ルピナス様は実の親には懐かないで。ローズ様にばかり甘えていましたから」
「そうなん…ですか?」
 ルピナス様にピアノを教えている間、母親のカレン様も見学していたけど。
 ルピナス様とカレン様との間に不穏な温度差を感じることはなかった。

「ローズ様が仕事でどうしてもっていうときは、メグミさんや俺がルピナス様のお相手をしていました。ルピナス様はメグミさんのことを本当に好きみたいで…」
「遊ばれていたと?」
「でも、ローズ様がご結婚されて。メグミさんは退団しちゃって。だから、俺としてはルピナス様は心が不安定になられているのではと心配してたんですけどね」
「要は、情緒不安定な中で神様とやらに次期国王に任命されたと?」
 あまりにも。
 …あまりにも、なんだそれはという内容である。

 やっぱり太陽様は誰かに騙されているのか。
 どこまでが真実なのだろうか。
「ルピナス様にお会いすることは出来ないのですか?」
 机の引き出しにしまってあるブローチ。
 あれを返してしまいたかった。

「無理っすね」

 一言。
 太陽様に「そうですよねー」と苦笑いしてしまう。
 とにかく、話が本当かどうかはわからないけど。
 もう、ルピナス様に会うことは出来ないのだ。

「さあて。そろそろ寝ますか」
 太陽様は丁寧に毛布を折り畳んだ。
「妹が言ってましたけど、寝不足は美容の敵だそうですよ」
「…また、話せますか。太陽様」
 ぴたっと太陽様の動きが止まった。
 いつもにこにこ笑っている太陽様が真剣な表情になる。
「ごめんなさい。なんでもないです。おやすみなさい!」
 まさかそんな表情をされるとは思わなかったので。
 立ち上がると逃げるように階段を駆け上がった。

 乱暴にドアを閉めると。
 へなへなとしゃがみ込んでしまう。
 何で、今更になってこんな変な感情になるの?
 どうして、今になって。
 モヤモヤするの。
 こんなのオカシイ。
 うわー、私。今、すっごくキモチワルイ奴だ。