色褪せて、着色して。Ⅶ~カンパニュラ編~

 急に怖い顔をするので。
 やばい…と焦る。
「あの、私がルピナス様にピアノを教えている間。直接お話することは一度もなかったんですけど、どうやらルピナス様は他の方とは会話されるようでしたので…」
 うん。話せるのは知っているけど会話しているのは見ていない。
 思いっきり、口から出まかせ。
「ああ、そういう意味ですか。確かに、俺もルピナス様と直接会話はしてないっす」
 どういう意味でとらえられたんだろう…
 カップを持ってホットミルクをまた一口飲む。
「ルピナス様はメグミさんやローズ様とは会話していましたね。まあ、メグミさんは目が見えないから会話しないとコミュニケーション取れなかったんでしょうけど」
 なんか、一度に情報量が多すぎる…
 ぐわんと頭が痛む。
「ルピナス様って口数が少ないだけなんですかね? てっきり私は話せない子なのかとばかり思ってました」
「うーん。確かに。喋らない上にあの見た目ですもんね。俺もどうしていいのか最初わかんなかったすよ」
 ルピナス様はサングラスをかけている。
 目の色を隠すためだそうだ。
「ローズ様に訊いたら。なんかルピナス様が2~3歳くらいのとき、前国王の側近たちに酷いことを言われたらしいんですよ。それがトラウマになって、親しい人としか話せなくなったって言ってました」
 前国王ということはローズ様のお父様。
 お母様のことは知っているけど。お父様のことをそういえば知らない。

「太陽様はルピナス様の目のことは…」
「ああ、目の色のことっすか? 勿論知ってますよ。綺麗ですよね」
 ルピナス様は両目の色が違う。
 片方は蘭様・ローズ様と同じ青色。
 もう片方は、カレン様と同じ紫色。
 オッドアイは、この国では不吉な象徴だと言われている。
 だから、ルピナス様はサングラスをして目を隠している。
「やっぱり、目の色のことをボロクソに言われたんですかね…」
 幼い頃に、見知らぬ人達に悪口を言われたら。
 誰でもトラウマになるだろう。
 想像するだけでも、ぞっとする。
「いやあ。それもあるんでしょうけど。ルピナス様はローズ様に似ているからでしょうね」
「えっ」
 今夜だけで、何度目であろう。
 とんでもない爆弾発言に。
 言葉を失う。