色褪せて、着色して。Ⅶ~カンパニュラ編~

 大きい騎士は頭を下げると。
 鉄格子の扉をゆっくりと開けた。
「どうぞ、外に出てください」
「えっ、いいの?」
 質問にろくに答えていないというのに。
 こんなあっさり出ていいのだろうか。

 外に出ると。
 小さな騎士がこっちを黙って見ている。
「えっと…用事は済んだんですか?」
「ええ」
 大きな騎士が短く言った。
「マヒル姫。すいませんが、目隠しをさせていただきます」
 いつのまにか大きな騎士の手には布がある。
「おいっ」
 再び機械音が響く。
 小さい騎士が多分、怒っている。
 ビクッと身体が震える。
「怒らないでください。文句は後で受け付けますから」
 ばさっと頭上から布を被せられる。
 完全に視界が見えなくなると。
 カランという金属音が地面に鳴り響いた。

「失礼します」
 ふわっと身体が宙に浮く。
「おいっ!」
 機械音の二度目の「おい」という突っ込み。
「申し訳ございません。俺ごときが貴女様に触れるなど…暫く辛抱してください」
 多分。
 多分だけど、お姫様抱っこしてくれているのは。
 大きな鎧の騎士だと思う。
 騎士は私をお姫様抱っこしたまま。
 走り出した。

 あ、外に出たなと感じたときには。
 「どうぞ」
 と言って、目隠しである布を外されたときだ。

 目の前には見覚えのある自分の家があった。
 家の前に立っているトペニが私に気づいて。
 物凄い勢いで駆け付けてくる。
「マヒル…!? マヒル姫か!?」
 トペニの大声に気づいたのか。
 今度は家から物凄い勢いでバニラが出てきた。

 夢でも見ていたのだろうか。
 私、さっきまで牢屋にいたはずなのに。
 真っ暗な肌寒い夜。
 私は無事に帰還したようだ。