色褪せて、着色して。Ⅶ~カンパニュラ編~

 大声を出すなんて淑女らしくないと怒られるだろう。
 だが、こっちは緊急事態なのだ。
「誰かきてー」
 おーいおーいと。
 暫くの間、叫んだ。

 かつん、かつん。
 足音はすぐに聞こえてきた。
 かつん、かつんという機械音が近づいてくる。
 姿が見えると、「きゃー」と短く悲鳴をあげる。

 一度はローズ様が身に着けているのを見たから
 免疫はついていたはず…なのに。
 実際に、鎧姿の騎士を見た瞬間、卒倒しかけた。

 一人は背の高い鎧姿の男。
 もう一人は背の低い上に、慣れていないのか。
 歩き方がよろよろとしていた。
「私、なんでここにいるんです?」
 動揺を隠すように大声で言った。
 うるさい…と今すぐに剣を抜かれそうな空気が出ていた。

 大きな鎧姿の騎士は、小さな鎧姿の騎士のほうを見た。
 小さな鎧姿の騎士は、手にスケッチブックを手にしている。
「え、筆談!?」
 思わず、カイくんを連想してしまう。
 小さな騎士はスケッチブックにつらつらと何かを書いて。
 私のほうに見せた。
「あなた…は」
 蝋燭のあかりだけだと暗くて見えない上に。
 騎士の書いた文字は、カイ君以上に悪筆だった。
「…すいません。ちょっと読めなくて」
 目を細めて、目が悪いフリを一応してみせた。
 背の高い騎士はスケッチブックの字を見て「あー」と声を漏らす。
 その声は、曇っていて。
 聴いたことのない声だった。

「…あなたが嫌いなのは誰だ?」

「えっ!?」と声が漏れた。
 小さい騎士が発したのは、機械音だったからだ。
 人間の声ではない…性別も年齢もわからない。
 甲高い機械音は、この国では絶対に聞くことはない音声だ。

「あなたが嫌いなのは誰だ?」

 もう一度。
 小さい騎士が言った。
 恐らく、怒っているのが伝わってくる。

 何故、声を機械で変えているのかは、わからないが。
 混乱する余地を与えてはくれない。
「……」
「あなたが嫌いなのは・・・」
「それを聴いてどうするの?」
 何故、勝手に牢屋に閉じ込められ。
 鎧姿の騎士に尋問を受けなきゃいけないのだろうか。
 すぅ…と鼻からから空気を吸って口からゆっくりと吐き出す。
「ねえ。私が具体的に誰かって名前をあげたら、そうしたら。私を始末するの?」
「シマツ・・・?」
 逆ギレしてしまったのは。
 てっきり私は小さいほうの騎士が蘭殿下だと思ってしまったからだ。
 だが、様子を見ていると。
 何かが、おかしい。
 始末って何だ? という空気が流れた。
「私が誰かの名前を具体的にあげたら。そうしたら、私を殺すの?」
「コロサナイ!! マヒル・・・アナタ、ころさない!!」
 何故か、カタコトで言う小さな騎士に「えーと…」と大きな騎士のほうに助けを求めた。

「貴女は王家にとって大事な方なのです。命は必ず保障します。ですから、質問に答えていただくと有難いのです」
 フォローするように大きな騎士が言った。

 大事な方…のわりに今、ここにいるのは牢屋なんですけど。
 ちぐはぐな、やりとりに「うーん」と考えるふりをする。

「みんな、嫌い」