色褪せて、着色して。Ⅶ~カンパニュラ編~

 祖国の礼拝堂に立っていた。
 近くに新しい礼拝堂が出来たので、
 実質、この礼拝堂は私専用だった。

 ヒューゴとまだ出会っていないということは中学生の私か。
 家から逃げ出して、ここに来て。
 オルガンの前で立ち尽くしている。
「ハッピーバースデー」
 振り返ると、照れくさそうにテイリーが立っていた。

「…どういう夢よ」
 てっきりまた悪夢を見るのかと思っていたので。
 自分の脳内に突っ込みを入れる。
 ここはどこなのか。

 起き上がると、目の前に鉄の柵が見える。
「…うん?」
 家でないことは確かだ。

 ゆっくりと立ち上がると。
 はらりと毛布が落ちた。
 ごつごつとした地面の上には高級そうな絨毯が敷いてあって。
 私はその上に寝かされていたらしい。
 毛布も、よく見るとシルクでは…?

 きょろきょろと見回して。
 ここはどうやら牢屋なのだということを理解した。
「ついに私も罪人扱いー?」
 今度は何の罪よ。

 もうため息をついてしゃがみ込む。
 私は性格がキツいと言われるかもしれないけど。
 一度だって罪になることなんて、していないつもりだ。
 ただし、
 いつだって王家の人間…特に蘭殿下に嫌われている。

 王弟の蘭様のことだ。
 適当に理由をつけて。
 私を牢屋に閉じ込めたってことか…

 いや。
 それにしては。
 牢屋にいるにも関わらず、
 高級絨毯と毛布は誰が用意したのだろう?

 窓がないので、朝なのか夜なのかもわからない。
 じめじめした空気の中。
 柵の向こうには、無数の蝋燭に火が灯されていて。
 その明かりでようやく周辺の様子がわかる感じだ。
 人の気配はない。

 あーあ。
 再び立ち上がる。
 しばらくぼんやりしたけど。
 何も変わる気配はない。
 自分にとっては何もしてなくても。
 絶対に蘭殿下の怒りをどこかで買ったに違いない。

「ちょっと、誰かいないのー!!」

 寝起きだったので。
 声が少し裏返った。