色褪せて、着色して。Ⅶ~カンパニュラ編~

 常に、ローズ様の側近の誰かが見張ってくれているのは知っている。
 だけど、オーロラ姫が来てから。
 そんな気配すら感じなくなった。
 トペニは前を向いて。
 私とは目を合わせようとしない。

「トペニはさ。どうして、オーロラ姫のところに行かないの?」

 零れ出た言葉に、トペニは「あん?」と言って顔をしかめた。
 決して、こっちを見ることはない。
「前も同じこと質問しましたよね?」
 同じこと言わせる気か?
 冷めた表情をするトペニに「そうじゃなくて」と反論する。

「だってさー。バニラもスズメもオーロラ姫のところでしょう? 騎士の人達はみーんなオーロラ姫のところじゃない」
「…俺が誰かわかっていて、訊いてます?」
 眼球だけがぎょろりと、こっちに向いて。
 また、すぐに前を向いた。
 私はトペニの言っていることがよくわからなかった。
「だって、トペニも国家騎士でしょう?」
「そうじゃなくて、俺の過去ですよ。過去」
「へ?」
 トペニの言うことの意味がまだわからず。
 首を傾げる。
「俺は罪人ですよ。しかも、娼婦館で働いてた。オーロラ姫っていうのはまだ10代なんでしょう?」
 やれやれ…という様子でトペニに言われ。
 ようやく、トペニの言いたいことがわかった。
「俺みたいな得体の知れない人間は近づくなんてできないっしょ」
「…ごめん」
 とっさに謝る。
 トペニはうつむいて。
 自分の手をじっと見た後、また前を見た。
「それに、オーロラ姫のところに行けって命令されても断りますよ」