色褪せて、着色して。Ⅶ~カンパニュラ編~

 帰宅すると、また一心不乱にピアノを弾き続ける。
 なんだ、あのオーロラ姫は。
 歩けないんじゃなかったの?
 そもそも、病気っていうのは嘘じゃないの。
 わざとらしく咳き込んで。
 さっきは、わざと転んだに違いない。

 みんな、みんなおかしい。
 みんな、いきなり現れたおばあさんのようなオーロラ姫に夢中になってる。
「……」
 気づけば夜。
 あーあと盛大なため息をついて立ち上がる。
 眩暈を覚えながらも、勢いよく玄関の扉を開けた。
「トペニ、リクエスト曲は?」
 トペニは郵便受けをのぞき込むと。
「ゼロっす」
 と言った。
「なんでだろう。やっぱりマリアちゃんが言っていた通り、忙しいからかな?」
「まあ…どうでしょうね」
 と、トペニは目をそらした。
 あからさまに、何かを知っている顔だった。