色褪せて、着色して。Ⅶ~カンパニュラ編~

 食事を忘れ、
 睡眠を忘れ、
 ピアノを一心不乱に弾き続けること3日間。
 燃え尽きると。
 手が勝手に止まった。
「駄目だ…こんなんじゃ駄目だ」

 大声で独り言を言うが。
 この家には誰もいない。

 自分らしさを音に出すというのは、無理だ。
 自分らしく弾くっていうのは無理だ。
 練習すればいいってもんじゃない。
 どうすればいい?
 この国にはテレビもなければCDもない。
 本? 村に本屋さんがあるのか。
 図書館があるのか。
 指導者…先生に頭を下げて、教えてもらうしかないのか。
 自分に出来ることをしなければ。

「疲れた・・・」
 考えるのがしんどいよ。
 でも、泣くのは負けな気がするから、泣かない。
 流石にぶっ通しで弾くのは疲れた…

 立ち上がると、眩暈で目の前がちかちかした。
 このままでは何も変わらない。
 腹は立つことには変わりないけど。
 散歩でもするか…

 着替えて外に出ると。「散歩っすか」と声をかけられる。
 誰も居ないはずなのに、いきなり声かけられたものだから。
「ぎゃー、泥棒!」
 と大声を出してしまった。
「なんすか、泥棒って。しっかりしてくださいよ。こんなイケメンどうしたら忘れるんですか?」
 というチャラい会話にトペニだとわかっていながら、
「ぎゃー、トペニがいる」
 とまた悲鳴をあげてしまった。