色褪せて、着色して。Ⅶ~カンパニュラ編~

 ゆっくりとしたテンポから、
 人が叫んでいるようなメロディー。
 飲み込まれるような音楽に、食われるという恐怖を覚える。
 うねる、うねる、うねる…。
 魂が吸い取られる…。
 わけがわからない感情になった途端、
 曲が終わった。

「本来、ピアノの演奏というのはこういうこと。はい、本日は終了」
 鋭い目で先生が言った。
 自分の曲を弾かせることさえ許されない…

「ありがとうございました!」
 なんという屈辱だろう。
 恥ずかしさのあまり走る。

 外に出ると、汗が噴き出す。
 早く帰らなきゃと心臓がバクバクする。
 今はとにかく、ここから去りたい。
 馬車の前には、バニラとスズメがいたけど。
 オーロラ姫の侍女と話をしている。
 てっきり、オーロラ姫の侍女が説教でもしているのかと思いきや。
 和やかに会話をして…いる?

「あ、マヒル様。お疲れ様です」
 声をかけそびれた私に気づいたバニラがこっちを向いて頭を下げる。
「では、私はこれで」
 オーロラ姫の侍女が頭を下げて去って行く。
 なんか…面白くない。
「家に早く帰りたいわ」
 イライラしながら言ってしまうと。
 スズメは「すいません!」と勢いよく謝った。