その日の夜。
私は秘密の館に向かった。
バニラには休んでいていいって言ったのに。「休んだので大丈夫です」と言って付いて来た。
馬車を降りると。秘密の館の扉が開いていて。
ピアノの音色が聞こえた。
知らない曲だったけど。
なんだか泣いてしまいたくなるような悲しい曲だった。
「こんばんはー」
挨拶をして、中に入ると。
ピアノの前に誰かが座っていて。
側に誰かが立っている。
「素晴らしい。これは貴女の国の曲?」
どうやら、先生が弾いているわけじゃなさそうだ。
「わたくしが作った曲です」
その声に足を止める。
…なんでいるの?
顔がひきつる。
ただ、秘密の館は先生の姿をはっきりと映し出さないように照明を抑えているので。
誰かが私を見ても、表情は近づかない限りわからないはずだ。
私は黙って、ピアノの前に座るオーロラ姫と先生を眺めた。
「ああ、こんばんは」
先生はこっちを見て、冷たく言った。
即座に、わざとだなと気づいた。
週に1~2度の先生のレッスンは、この時間だと決まっている。
私にオーロラ姫の曲を聴かせるために、こうして弾かせてみせているのだ。
もともと意地悪な先生は、ヒサメという呼び名で。
本来は40代だそうだけど、魔法のせいで17歳で年齢が止まってしまっている。
いつも暗闇に紛れて、一言、二言だけ言葉をもらって。
レッスンは終わるのだけど。
先生は、オーロラ姫の前では饒舌だ。
「オーロラ様。もう一度、今の曲を弾いてもらえませんか?」
「え? わたくしは良いですが・・・」
と今になって、オーロラ姫は私の方を見た。
私は、歪んだ表情のまま、ぐっと唾を飲み込む。
「お願いします」
なんで、この人に頭を下げなきゃいけないのだろう。
私は秘密の館に向かった。
バニラには休んでいていいって言ったのに。「休んだので大丈夫です」と言って付いて来た。
馬車を降りると。秘密の館の扉が開いていて。
ピアノの音色が聞こえた。
知らない曲だったけど。
なんだか泣いてしまいたくなるような悲しい曲だった。
「こんばんはー」
挨拶をして、中に入ると。
ピアノの前に誰かが座っていて。
側に誰かが立っている。
「素晴らしい。これは貴女の国の曲?」
どうやら、先生が弾いているわけじゃなさそうだ。
「わたくしが作った曲です」
その声に足を止める。
…なんでいるの?
顔がひきつる。
ただ、秘密の館は先生の姿をはっきりと映し出さないように照明を抑えているので。
誰かが私を見ても、表情は近づかない限りわからないはずだ。
私は黙って、ピアノの前に座るオーロラ姫と先生を眺めた。
「ああ、こんばんは」
先生はこっちを見て、冷たく言った。
即座に、わざとだなと気づいた。
週に1~2度の先生のレッスンは、この時間だと決まっている。
私にオーロラ姫の曲を聴かせるために、こうして弾かせてみせているのだ。
もともと意地悪な先生は、ヒサメという呼び名で。
本来は40代だそうだけど、魔法のせいで17歳で年齢が止まってしまっている。
いつも暗闇に紛れて、一言、二言だけ言葉をもらって。
レッスンは終わるのだけど。
先生は、オーロラ姫の前では饒舌だ。
「オーロラ様。もう一度、今の曲を弾いてもらえませんか?」
「え? わたくしは良いですが・・・」
と今になって、オーロラ姫は私の方を見た。
私は、歪んだ表情のまま、ぐっと唾を飲み込む。
「お願いします」
なんで、この人に頭を下げなきゃいけないのだろう。



