色褪せて、着色して。Ⅶ~カンパニュラ編~

 オーロラ姫の一言に。
「えっ」と声が漏れた。
 オーロラ姫の後ろに立っていた太陽様を見た。
「いや! 俺なんて、弾けませんよ」
 急に慌てだす太陽様に私は目の前が白く…現実的に白いけど。
 頭がクラクラとした。
「あら、今朝。弾いてくれたじゃない。ご家族との思い出の曲なのでしょう。そうだわ。今、弾いて見せてちょうだいな」

 …なんたる無茶振りなのか。
 オーロラ姫が無邪気な表情で言って。
 私は吐き気を覚えた。
「いやいやいや」
 太陽様は高速で両手をぶんぶんと振った。
「俺みたいな素人がプロに聴かせるのはまずいっすよ」
「そうなの? でも、プロと言っても奥様でしょ」
「いや。余計にまずいっすよ。もう少し練習してみますんで。そん時にでも。ねえ、マヒル様」
 いつもは、セシルさんと呼ぶくせに。
 太陽様は「マヒル様」とさらりと言いやがった。

「ふふふ。じゃあ、練習して今度。みんなで演奏会をしましょう」
「はい。了解っす」
「約束よ。私、時間がないんだから、そこのところ念頭に入れておいてちょうだいね」
 オーロラ姫の言葉に。
 太陽様は「しまった」というような表情を出した。
 何故か、オーロラ姫の侍女はこっちを見て睨んでいる。
「マヒル様、そろそろ」
 侍女の目的に気づいたのか、バニラの耳打ちに我に返った。
 勢いよく立ち上がる。
「ごめんなさい、長居してしまって。そろそろ、帰りますね」