「えっ? あ……」
ほんの少し長めの沈黙があった。
視線が細かく揺れていて、複数の選択肢の中から最適解を探しているように見える。まるで、子供に答えにくい質問をされて、どう説明しようかと戸惑っている母親のように――
「ちょ、ちょっと待ってください」
彼女は急にスマホを取り出した。
何をしているのかは分からない。予定を確認しているのか、何かを調べているのか……
「……駅の西口じゃなくて、東口の方にも別の店がありますので、そちらでもいいですか?」
「……あ、はい」
彼女は少し慌てたように、駅の向こう側へとスタスタと歩き始めた。
なぜ東口なのだろうか? と思いながらも、僕もその後を追うように東口の方へと向かった。
二人で入ったファーストフード店で、僕は彼女に告白した。
言い方が微妙で、「これって『告白』ですよね」と念押しされてしまったが、とりあえず僕は大沼さんと付き合うことになった。
ただし、まずは「お試しのお付き合い」ということになった。「付き合っていることは秘密にしたい」とも言っていた。
まあ、その気持ちはわかる。
確かに、こんなヘタレな彼氏じゃ、心もとないだろう。岩本のせいで、少し自信過剰になっていたのかもしれない。
その日の帰りも、方向は同じなのにわざわざ別々に帰ることになった。
なんか勢いで告ってしまったけど、失敗だったのだろうか……しかも、中間テストの直前という、微妙なタイミングだったし……。
まあ、いまさら後悔してもしょうがない。まずは中間テストに専念しよう。
そして、テストが終わったら……
彼女に連絡をしてみようか――
(了)

