恋愛はめんどくさい!(番外編)星川翔太


 ある日、たまたま岩本と帰り際に一緒になって、二人で駅まで歩いていたときのこと。
 彼はいつもの砕けた口調で言った。

「なあ、前から思ってたんだけどさ」
「ん? 何?」
「その髪型とか、なんとかなんねえの?」
「ああ、まあ、これは……」
「ちょっと変えれば、かなり良くなるんじゃねえの? お前は元がいいからさ」
「いや、さすがにそれはないだろ」

 彼と話していると、僕の口調も砕けてしまう。無意識に相手に合わせてしまうのは、僕の中学時代からの癖、というか処世術みたいなものだ。

「マジで言ってるんだけどな。まあ、とにかく、なんとかしてくれ」
「……それって、岩本になんか関係あんの?」
「ある! モテるやつが周りに増えれば、出会いのチャンスが増える!」
「なんだそりゃ」

 僕から見たら、岩本の方がよほどイケメンに見えるのだが、本人はそうは思っていないらしい。
 少しワイルドすぎるのだろうか。でも、逆にK-POPアーティストみたいにスマートなやつなんて、そう滅多にはいないと思う。

「今はちょっと中性的な感じのやつがいいんだよ」

(いや、だからそんなやつは滅多にいないってば!)

 そう思ったが、口には出さなかった。

「お前みたいなやつが一人いると、女は安心するんだよ」

 ……なんだか、ただ乗せられているだけのような気がする。

「まあ、とにかく少しは気にしろよ! お前は元がいいんだよ。もったいないって」

 岩本は勝手に僕の肩を叩き、そのまま駅で別れていった。

 ……考えてみると、今までそんなことを言う人は、僕の周りにはいなかった。
 たいていの人は他人のことを、からかったり、けなしたり、バカにしたり……まあ要するに、マウントを取りたいのだと思うが――

 何か別の意図があるのかもしれないが、今まで話した感じでは、岩本には裏表があるとは思えない。なんというか、自分に自信を持っている感じがする。
 これが、いわゆる「余裕」というやつなのだろうか……