桜の奇跡❀廉side

さっきまで重たかった体が軽くなり、ピンクの光に包まれた。

毎年不思議に思っていた光だった。

風が吹いて花びらが舞う。

俺はいつも未桜と来ていた公園にいた。



未桜がベンチに後ろ姿で座っている。

俺はこれはきっと、最期の時間なんだと思った。

長くはない、ほんの少しの時間の奇跡なんだ。

筋肉がなく細くなっていた腕も、元気だった頃のように筋肉があった。

手で触れると、なくなった髪も生えている感覚がある。

歩けなくなっていた足も歩けてる。

不思議だった。

「未桜…花びら…ついてる」
俺は後ろから声をかけた。

未桜の隣へ行き、花びらを髪の毛からとった。

未桜の横顔が目に入る。嬉しい。

笑みがこぼれる。

1年前にここで、俺は花びらが髪について、取ってもらったことを思い出した。


「いつもの……夢だよね?」
未桜はそう言った。

けど、さっき未桜の髪に触れた時に感触があった。

「そうかな?」
俺は言った。

良く見る未桜の夢なんだろうか。

未桜の可愛い声も、姿も変わらない。

まるで現実みたいだ。

未桜の手を繋いだ。

肌寒かったのが、温かい体温に包まれる。

「夢じゃないってこと?」
未桜が俺に言う。

俺は困ったように顔をしかめた。

「ほっぺさ、つねってみようよ」
未桜がそう言うと、俺は微笑んだ。

「よし、俺も」
そう言って、自分の頬をつねる。

「「イタッ」」
2人の声がハモった。

感覚がある。

俺も未桜も笑顔になった。

「やっと、会えた」
未桜は言った。

俺もゆっくりと頷いた。

今にも泣きそうになるのをグッとこらえた。

「廉が好き。ずっと好きだから」
未桜は俺の左手を強く握った。

未桜が初めて、俺に好きだと言ってくれた。

想っていてくれてたんだ。

「ずっと……ずっと俺は未桜が好きだよ。これからも」
真っすぐに未桜を見つめて言った。


「そばに……そばにいたかった」
そう言うと、俺の瞳から涙がこぼれ落ちた。

未桜をぎゅっと抱きしめた。

未桜の呼吸と甘くていい香りがする。

温もりを感じる。

優しい風が頬を撫でて、まるでもう時間だと言われているような気がした。

ピンクの光がだんだん強くなってきて、俺を包みこむ。

「ばいばい」

俺はいつまでもこうしていたかったが、体を離した。

最期に未桜は微笑んだ。

それから未桜は、俺にキスをした。

一瞬唇に触れたような気がした。

嬉しかった。

一生ぶんの恋を…それから、たくさんの思い出をありがとう。

幸せだった。

俺は微笑んだ。


ワタと未桜のこと、ちょっと離れたところから見守ってるから。




つよい風が吹き、桜の花びらが舞った。



✿END✿