桜の奇跡❀廉side

秋の終わり頃、胃の痛みや吐き気が強くなり、食欲も
なくなり、大学病院へ行くことになった。

医師は淡々とレントゲンやCT画像と、生検組織や血液検査の結果を医師が説明する。

どうやら、胃がんらしく、手術は難しく抗がん剤による化学療法を提案された。



「残念ですが、余命は半年です」
そう、医師が自分に向かって言っているにも関わらず、自分の話をされている感覚がない。

誰か他人の話を聞いているような……

嘘だろ?まだ、15年しか生きてないのに。

半年で死にますって。
何かの間違いなんじゃないか?

母親が大粒の涙を流している姿を見て、やっぱ自分の話なのかもって思った。

何で俺が?

癌って年をとった人がなる、病気だと思ってた。

ショックで、呆然とするしかなかった。

未桜に病気のことを言うべきか、考えた。

自分でもこんなに信じられなくて、辛いのに。

こんな思い、未桜にしてほしくない。
















ワタには病気の話をした。


友達の誰にも打ち明けないのも辛すぎる。


しばらく黙っていた。





「何だよ……何で廉なんだよ…そんな話…嘘…だよな……」
ワタは話し始めると、涙を流した。


「ワタにだけは、嘘つきたくないから……だからこれが本当のことだから」
俺はそう言った。

「未桜ちゃんにも、話すよな?」
ワタの目から、涙がこぼれ落ちる。

鼻をすすりながら、ワタは言った。

俺は首を横に振った。

「言わない……言えねえよ」
未桜を思い浮かべたその時、涙がこみ上げてきた。


「余命半年の恋人なんて……悲しすぎるだろ」
俺は絞り出すような声で言った。

「そんなの関係ない。

廉と一緒にいたいって、絶対言うよ。

未桜ちゃんだったら」
俺の肩にワタは手を置いた。

「ワタに悲しい想いさせて……ごめん」


「何言ってんだよ」

「未桜にまで…辛い想いさせたくない。

だから、自分勝手だってわかってるけど…離れようと思う」


「何だよそれ……あんなに未桜ちゃん好きって言っておいて、別れるってことかよ?」

「……」

別れる…ワカレル…あぁそういう話なんだ…そうだ離れるってそういうことだ。

あんなに他の奴に、未桜をとられたくないってずっと思ってたのに。

「そうだな」
力なく俺は言った。

「お前大丈夫かよ?病気だからって。

後で後悔するぞ」
ワタは目の前で訴えかけてくる。

俺は黙ってワタを見つめた。






未桜のこと、もう守ってやれないんだ。

そばにいられないんだ。