Marry Me?

 苦しくなった胸を押さえていると、彼が、たたた、と、素早くあたしに近寄り、あたしの背に手を添えると、下からあたしの顔を覗き込んでくる。――きゅん。

「大丈夫? 具合悪いんなら、駅員さん呼ぼ――」

「……あなたのせいです」彼の言葉を遮った。「あ……あなたが。朝っぱらこんな……か、格好良すぎるから……知らない女を姫抱きするとかいったいあなた、なに考えてるんです!! そんなことされたら普通は、女は即オチですよ!」

 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。抜けた顔もキュートで可愛い。……が。彼は。腰を折り、平らなお腹を押さえて、ははは、と弾けるように笑い出した。

「ちょっとあなた……あたし、真剣なんですよ?」あたしは本気でむっとした。だって彼の笑った顔が、無邪気で、可愛いんだもの。「本当に……他の女にこんなことしたらストーキングされますよ。冗談じゃなく」
 
 笑いを止め、目尻の涙を拭った彼は、真面目腐った顔であたしを見据えた。――きゅん。

 彼の、端正な唇が動く。――大丈夫、と。

 え? と口を開いたままのあたしに彼は、

「他の女の子に、こんなことしたりしないよ。……ごめん。正直に言うね。……おれ。

 ――きみに、一目惚れしたのかもしれない」