闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜



「えーっと、どこの建物だっけ……」


案の定、私は颯と別れてから
ものの数分で迷子になった。


——大学初日。
広いキャンパス、見慣れない景色、人の波。


今まで誰かに頼って生きていた私は、
一人になると何もできないことを改めて痛感する。



颯に連絡しようか迷っていた時。



「……もしかして、教室探してます?」



一人の男子が声をかけてきた。


少し着崩したシャツに、
透け感のあるアッシュブロンドの髪。


颯の「静」の格好良さとは正反対の——
「陽」のオーラしか感じない人だった。


「は、はい……」

「俺も今から教室行くところで。多分一緒だと思うから、行こ?」


その屈託のない笑顔に安心してしまった私は、そのまま彼についていった。


(「知らないやつについて行くな」ってさっき颯に言われたばかりなのに……でも同じ学科の同級生だったし、大丈夫だよね)


自分に言い聞かせていると、少し前を歩く彼がこちらを振り返る。


「俺、上城 碧(かみしろ あおい)。よろしくね」

「あ、篠原……美桜です」

「美桜ちゃん?」

「あ、はい……」


すると、碧くんがにこりと微笑んだ。


「可愛いね」

「!?」


不意打ちすぎて心臓が飛び跳ねる。


(え、可愛いって何!?名前がだよね……!!)


自然にパーソナルスペースに入り込んでくる彼。

だけどその初対面と感じさせない気さくさと、
明るくてまっすぐな笑顔に、どこか惹かれてしまう自分がいた。

私は、そんな彼の背中を追うようにして教室へと急いだ。