闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜

***

桜の花びらが舞い落ちる道を、並んで歩く。
ようやく同じ大学で、同じ時間を過ごせる。

それは嬉しいことだった。


けれど——


「ねぇ、見て。あれ、佐伯先輩じゃない!?」

「うそ、隣の子誰? 彼女!?」


彼は、想像以上に有名人だった。


登校中、あちこちから視線を感じる。

一方で当の本人は、
そんな周囲を気にも留めず、まっすぐ前だけを見つめたままゆっくりと歩いていた。


「あの……教室までついてきてもらわなくても大丈夫だから……ね?」

「迷子になられたら俺が困るんだよ。……ほら、こっち来い」


颯が私の肩を自然に抱き、ぐいっと自分の方へ引き寄せた。


(なんだか完璧な「王子様」の隣にいるのが私だなんて、嬉しいような申し訳ないような……)


そんな複雑な気持ちで歩いていたその時。


「佐伯先輩!」


背後から元気な声が響いた。


「今度のフットサル、助っ人来てくだ——」


男子が横に並んだ瞬間、目が合う。


「えっ……彼女っすか!?」

「!!」


否定しようと口を開いた瞬間、別の男子たちが颯を囲んだ。


「よっ、イケメン!今日も朝から大変だね〜……って、おい、まじかよ!」

「颯、彼女できたん!?」


颯は笑うだけで否定も肯定もしない。


「ち、違います……!」

「エース、探してたぜ。次の試合出てくんない?」
「それよりサッカー部の飲み会、いい加減来るよな!?」


彼に吸い込まれるように次々と寄ってくる男子たちに、私の声はすぐに掻き消された。


「気が向いたらな」


けれど颯は、器用に受け流していく。