闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜

***


「うーん」


朝食を終えた私は、2枚のワンピースを両手に持ち鏡の前に立っていた。


「迷ってるのか?」


背後から突然響いた声に肩が跳ねる。
部屋の入口で、颯が壁に寄りかかりながら腕を組んで立っていた。


「……ちょっと、ノックくらいしてよ!」

「お前が開けっぱなしにしてるんだろ?」


颯が用意した「私専用ルーム」が、どこか自分の部屋の感覚になっていた私は、うっかりドアを開けたままにしていたことに今更気づいた。


「そうだった……」


颯は涼しい顔で部屋に入ってくると、私が手にしていたミニ丈のワンピースを見てわずかに目を細める。


「それは、露出が多すぎる」

「えー、でも可愛くない?」

「似合うけど……変な”虫”が寄ってきたら困るだろ?」

「えっ……虫はちょっと、苦手だから困る……」


颯はふっと笑うと、丈の長い方のワンピースを指差した。


「俺は、こっちがいいと思うよ。……美桜の白さが引き立つし、上品だ」

「……じゃあ、お兄ちゃんがそう言うなら……」


私は、言われるままに颯が選んだワンピースに着替えた。
そして靴を履く私の隣に、彼は当然のような顔をして並んだ。


「俺も一緒に行くよ。お前一人じゃ迷うだろうし」

「大丈夫だよ……多分」


玄関の鏡で前髪を整える颯が、鏡越しに私を見る。


「多分、だろ?」

「………」