「……涼しい」
「おかえり、美桜。設定温度、もう少し下げようか?」
201号室のドアを開けると、
キッチンで冷たいレモネードを作っていた颯が爽やかに微笑む。
——そう。今日から私の夏休みが始まったのだ。
お兄ちゃんの提案
(という名の、断れない約束)により、
私は毎日午前10時から夕方まで、
この部屋で過ごすことになっていた。
「ううん、ちょうどいい」
私は、目の前に出されたレモネードに
縋り付くようにストローでごくごくと、
乾いた喉を潤す。
レモンの酸味と程よい冷たさの
爽やかな味わいが口の中に一気に広がった。
「あ〜生き返る。……でも、本当に毎日ここで勉強しなきゃダメ?」
「夏休みは気が緩みやすいから。それに、美桜は課題を溜め込む癖があるだろ? だから俺が隣で見ててあげるよ。……ほら、ここがお前の席」
ダイニングテーブルの、颯のすぐ隣。
そこには、私の愛用のペンケースと、
大学から持ち帰った重いデザイン資料が
整然と並べられていた。

