闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜

***


「じゃあ、そろそろ戻るね……!」


夕食を食べ終え、立ち上がったその時だった。


「今日は、ここに泊まっていけばいいよ」


颯が、落ち着いた声で言った。


「……え?」

「明日から大学だろ? 初日から遅刻したら大変だし……お前の部屋もまだ片付いてないだろ」

「え、でも……いいの? そんなにお世話してもらって、私……ダメ人間になっちゃいそう」


冗談めかして言うと、
颯は少しだけ意地悪そうに目を細めた。



「いいんだよ、俺の前でだけはダメな美桜で。……俺も頼ってもらえる方が嬉しいし」



自分でやらなきゃいけないという気持ちと、
甘えたいという気持ちで、素直に受け止めていいのか迷う。

けど——



「いいか? 困ったことがあれば、何でも俺に言って。他の誰かじゃなくて……俺に一番に頼るって、約束な?」

「うん、わかった。約束する」



彼の心強い言葉に促され、私はすんなり頷いた。

颯のおかげで、数時間前まで私が抱えていた不安は薄くなっていた。



お風呂に入り、颯が用意してくれたベッドに潜り込む。



引っ越しで疲れたせいか、颯が隣にいる安心感からか、
私はいつの間にか眠りに落ちていた。


電気も消さずに——。


***


夜遅く、美桜が深い眠りについた頃。

部屋の電気がそっと消される。



「おやすみ、美桜」



颯はそっとベッドに近づくと、
彼女の手を、長い指先で静かに握った。



眠っている美桜を見つめながら、

彼はその指先に、愛おしそうに唇を重ねた。



「——もう二度と、お前を外の世界になんか出さない」



***