***
夏の熱気と、
どこかから漂うソースの焼けた匂い。
賑やかな笑い声。
あっという間に空が群青色に染まり、
祭りの会場は、人混みで溢れ返っていた。
「ねぇ、あれ佐伯先輩!?」
「うっそ、浴衣姿もかっこよぎる……」
そんな黄色い声も、
周囲からの羨望の眼差しも。
颯は完全に無視し、私の右手を引いていく。
「……はぐれるなよ、絶対に」
繋がれた手は、
指と指が深く絡み合う——恋人繋ぎ。
(お兄ちゃんなのに、こんな繋ぎ方でいいのかな……)
繋ぎ方にドキドキしていると、
颯が何かを見て急に立ち止まった。
「お前、あれ好きだろ。食べたいか?」
視線の先にあったのは、ベビーカステラの看板。
「あっ、懐かしい!食べたいかも……!」
目を輝かせた瞬間、
颯がふっと目元を和らげて笑う。
「……言うと思った。人多いから、ここで待ってろ。……ついでに飲み物も買ってくるから」
「あ、私も行く!」
「いいから。お前は座ってて」
颯は私をベンチに座らせると、
私の手元をじっと見つめた。
「……その巾着、口が開いたままだ。さっきからスマホが落ちそうになってる」
「えっ、あ、本当だ……」
「人混みで落としたら大変だし、さっきバッテリーがないって言ってただろ? 俺のポケットで充電しておくから……ほら、貸して」
颯は私の手から自然にスマホを取った。
そして自分のモバイルバッテリーに
手際よく繋ぐと、そのまま人混みへと入っていく。
(……スマホまで預かって充電してくれるなんて。相変わらず、過保護だなぁ)
遠のいていく彼の背中を、
ぼんやりと見送っていた時だった。
「あ、いたいた」
ふいに聞き慣れた声が降ってくる。
こちらに向かって歩いてきたのは、
Tシャツに爽やかな夏のシャツをゆるく羽織った碧くんだった。
「碧くん……!」
「よかった。美桜ちゃんに少しでも会えたらいいなって思って、連絡したんだけど……全然出ないから心配してた」
昨日、彼は私から送った
断りのメッセージに、
『そっか残念! でも会場で見つけたら声かけるね』
と返してくれていた。
(本当に、私を見つけるまで探し回ってくれたんだ……)
胸が少し締め付けられる。
「ごめんね……颯にスマホ預けてて」
碧くんは一瞬驚いたように私を見ると、
「はい、これ」と手に持っていたりんご飴を私に差し出した。
「……美桜ちゃんに似合うと思って」
「え、いいの……?」
真っ赤に艶めく宝石のようなりんご飴。
私のために用意してくれたと思うと
嬉しくて、頬が少し熱くなる。
私が「ありがとう……」と言って受け取ると、
碧くんは私に顔を寄せて噂するように言った。
夏の熱気と、
どこかから漂うソースの焼けた匂い。
賑やかな笑い声。
あっという間に空が群青色に染まり、
祭りの会場は、人混みで溢れ返っていた。
「ねぇ、あれ佐伯先輩!?」
「うっそ、浴衣姿もかっこよぎる……」
そんな黄色い声も、
周囲からの羨望の眼差しも。
颯は完全に無視し、私の右手を引いていく。
「……はぐれるなよ、絶対に」
繋がれた手は、
指と指が深く絡み合う——恋人繋ぎ。
(お兄ちゃんなのに、こんな繋ぎ方でいいのかな……)
繋ぎ方にドキドキしていると、
颯が何かを見て急に立ち止まった。
「お前、あれ好きだろ。食べたいか?」
視線の先にあったのは、ベビーカステラの看板。
「あっ、懐かしい!食べたいかも……!」
目を輝かせた瞬間、
颯がふっと目元を和らげて笑う。
「……言うと思った。人多いから、ここで待ってろ。……ついでに飲み物も買ってくるから」
「あ、私も行く!」
「いいから。お前は座ってて」
颯は私をベンチに座らせると、
私の手元をじっと見つめた。
「……その巾着、口が開いたままだ。さっきからスマホが落ちそうになってる」
「えっ、あ、本当だ……」
「人混みで落としたら大変だし、さっきバッテリーがないって言ってただろ? 俺のポケットで充電しておくから……ほら、貸して」
颯は私の手から自然にスマホを取った。
そして自分のモバイルバッテリーに
手際よく繋ぐと、そのまま人混みへと入っていく。
(……スマホまで預かって充電してくれるなんて。相変わらず、過保護だなぁ)
遠のいていく彼の背中を、
ぼんやりと見送っていた時だった。
「あ、いたいた」
ふいに聞き慣れた声が降ってくる。
こちらに向かって歩いてきたのは、
Tシャツに爽やかな夏のシャツをゆるく羽織った碧くんだった。
「碧くん……!」
「よかった。美桜ちゃんに少しでも会えたらいいなって思って、連絡したんだけど……全然出ないから心配してた」
昨日、彼は私から送った
断りのメッセージに、
『そっか残念! でも会場で見つけたら声かけるね』
と返してくれていた。
(本当に、私を見つけるまで探し回ってくれたんだ……)
胸が少し締め付けられる。
「ごめんね……颯にスマホ預けてて」
碧くんは一瞬驚いたように私を見ると、
「はい、これ」と手に持っていたりんご飴を私に差し出した。
「……美桜ちゃんに似合うと思って」
「え、いいの……?」
真っ赤に艶めく宝石のようなりんご飴。
私のために用意してくれたと思うと
嬉しくて、頬が少し熱くなる。
私が「ありがとう……」と言って受け取ると、
碧くんは私に顔を寄せて噂するように言った。

