「……本当にお兄ちゃんが選ぶの?」
「当然。お前に一番似合うのは、俺が一番よく知ってる」
夏祭り当日。
颯の部屋に届いたのは、
淡い藤色に白百合が描かれた上品な浴衣だった。
(もっと子供っぽくて可愛らしい柄を想像してたけど……)
帯を締め終え鏡の前に立つ。
そこに映った私は——
少しだけ背伸びをしたような、
大人っぽい雰囲気を纏っていた。
「……どうかな?」
部屋を出ると、
浴衣姿の颯が玄関で待っていた。
颯がこちらを振り返った瞬間、
思わず心臓がドキッと鳴る。
銀色の刺し子がラメのように見える
黒地のシンプルな浴衣は、
彼の背の高さと整った顔立ちを
さらに引き立てていた。
「……」
颯は無言で私に歩み寄ると、
私の乱れた髪を静かに耳にかけた。
「……似合いすぎて、やっぱり外に出したくない。今すぐ帯を解いて、このまま部屋に閉じ込めておきたいくらいだ」
「もう……! そんな物騒なこと言わないで、早く行こ?」
冗談だと思って笑ったけれど、
私の頬をなぞったその指先の熱さは、
本音を物語っているようだった。

