「あ、ばれてた……? 今の断り方、厳しすぎない?」
私がゆっくり近づくと、
颯はさっきの冷たさが嘘のように、
甘い表情で私を椅子に座らせた。
「そうか? 事実を言っただけだ。……それより、さっきまで誰といたんだ」
「……碧くんたちと、打ち合わせで……」
「ふーん。……夏祭りの話でもしてたのか?」
その瞬間、心臓が飛び上がる。
「な、なんでわかるの……」
「彼のSNS。夏祭りのイベントページに『興味あり』って入れてただろ。お前を誘うことくらい、猿でもわかる」
(えぇ……)
こんなところに自分のIQの高さを見せてくるなんて。
冷酷さとは違う、別の恐怖を感じる。
次の瞬間、颯の視線がすっと私の肩へと移った。
「……お前の肩が出ているのも、”碧くん”のせいか?」
自分の腕に掛かったままのカーディガンを見て、
一瞬息が止まる。
——やってしまった。
「……約束、破ったね」
彼は立ち上がると、
私の腕からカーディガンを強引に取った。
そして有無も言わせぬ手つきで
私の肩にそれを掛け直す。
「外では脱ぐなと言ったはずだけど」
耳元で囁かれた低い声。
颯はにこっと笑って続けた。
「夏祭りは、俺と行こう」
その言葉に、一瞬なんて返すか迷う。
「……でも、約束しちゃって……」
「なら、俺がお前の代わりに断ってやろうか?」
私は咄嗟に首を横に振った。
「いい!自分で、断る……!」
「いい子だ。浴衣も、俺が選んでやるから」
颯は、満足そうに私の頭を撫でた。
——夏の日差しが降り注ぐ学食。
私を独占する「王子様」の瞳は、
熱さとは真逆の、
誰よりも深く、
冷たい愛を滲ませていた。
***

