闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜

***



「美桜ちゃん、おはよー」



大学に着くと、碧くんが資料を広げたテーブルで、
にこにこと頬杖をつきながら私を待っていた。


「ごめんね、遅くなって。席も取っておいてくれてありがとう!」

「ううん、俺も今来たとこ。じゃ、やろっか」


そう言うと碧くんは「これ、模擬店なんだけど……」とすぐに手元の資料を見せてくれた。
いつもの軽いノリと違って、意外と真面目で仕事が丁寧な一面があることに少し驚く。


「すごい……こんなに細かく考えてるなんて」


私がぽつりと漏らすと、碧くんは笑った。


「えー、本当? 美桜ちゃんに褒められると頑張った甲斐あるわ」


碧くんの発想は自由で楽しくて、
自然とこっちまで笑顔になる。

私たちはしばらく文化祭のアイデアを出し合った。



「よし、一旦こんなもんかな。ところでさ……」



碧くんはペンを置くと、私の服装に視線を向けた。



「そのカーディガン、やっぱり暑くない? 実はさっきから気になってて」

「あ……ちょっと、冷房対策で……」

「本当に? でもそれ、男もんのやつじゃない?」



笑って誤魔化す私に、碧くんは鋭く突っ込んだ。


(あ、たしかに……)


今思えば、暗めの色は
私のワンピースから浮いて見えた。


「実は、颯から貸されて。露出が多いし日焼けするからって」

「あー、やっぱり。あの人、相変わらず過保護なんだね……でもさ、無理に着る必要ないんじゃない?」

「……え?」

「だって、美桜ちゃんが着たくて着てるんでしょ?それを他人がとやかく言う必要ないと思うし。……それに、せっかくお洒落な服着てるのに、誰にも見てもらえないなんて勿体無いじゃん。室内だけでも、脱いでいいんじゃない?」


碧くんがふっと目を細めて、
私に微笑む。


その言葉に、ふわっと心が動かされた。



(確かに、碧くんの言う通りかも。お兄ちゃんは心配して言ってくれてるんだろうけど……誰にも見てもらえないのは)



私は肩に手を伸ばし、
颯から借りたカーディガンをするりと外した。



「いいじゃん、そっちの方が絶対可愛い」



碧くんが頬杖をつきながら、
私ににこりと微笑む。



その瞬間、自分でも
肩にのしかかっていた重さが取れたように、


ふわっと軽くなった気がした。