***
「あっ、そうだ!これ見て!」
私は颯にスマホの画面を見せた。
それは、以前スマホのデータを
整理していた時に見つけた動画。
映っているのは小学生の私と颯で、
実家で撮った、誕生日の時のもの。
『これからもずっと一緒な!』
画面の中の小さな颯が、得意げに言う。
「……こんなの、残してたのか」
「お母さんが持ってたやつ。前に送ってもらったの」
動画の中の私は、
ケーキをぐちゃぐちゃにして笑っていた。
「……変わらないな」
「え、どっちが?」
「両方」
それだけ言って、颯はふっと目を細めた。
でも、その笑顔が何かを確かめるみたいで、
胸の中が少しだけ熱くなる。
「もう、今の私はケーキを壊す方じゃなくて、ケーキを作る方だから」
自慢げにそう返し、私は冷蔵庫に隠しておいた
お手製ケーキをテーブルに運んだ。
「……え」
ケーキを見た、颯の瞳が微かに揺れる。
「じゃーーん!お誕生日おめでとう、お兄ちゃん!」
固まる颯の隣で、私は一本ずつ、
蝋燭に火を灯した。
そして、部屋の電気を消す。
「……これも、美桜が作ってくれたのか?」
「うん。綺麗で美味しいお店のケーキみたいには上手くいかなくて……不恰好になっちゃったけど」
暗い部屋にケーキの上で輝く蝋燭だけが、
部屋を温かく幻想的に照らしていた。
私はスマホを密かに動画モードにして、
テーブルの下でこっそりと握る。
——スタンバイ、OK。
「願いごと、ちゃんと考えてから火消してね」
ゆらゆらと揺れるオレンジの光の中、
彼はただじっとケーキを見つめていた。
どこか遠い場所を眺めているような、
寂しげな眼差しで。
「……どうしたの? 食べたくない?」
「いや、違う」
颯は、わずかに視線を落として続けた。
「……家族で誕生日祝うって、あんまりなかったからさ。成績が良くても、運動ができても、親は俺のことを見ない。家に俺の居場所なんてなかった。……だから、祝われることがこんなに嬉しいものなんだなって思って」
ぽつりと、静かな声で語られた颯の過去。
それは——
完璧な王子様として生きてきた彼の、
誰も知らない孤独な裏側だった。
「あっ、そうだ!これ見て!」
私は颯にスマホの画面を見せた。
それは、以前スマホのデータを
整理していた時に見つけた動画。
映っているのは小学生の私と颯で、
実家で撮った、誕生日の時のもの。
『これからもずっと一緒な!』
画面の中の小さな颯が、得意げに言う。
「……こんなの、残してたのか」
「お母さんが持ってたやつ。前に送ってもらったの」
動画の中の私は、
ケーキをぐちゃぐちゃにして笑っていた。
「……変わらないな」
「え、どっちが?」
「両方」
それだけ言って、颯はふっと目を細めた。
でも、その笑顔が何かを確かめるみたいで、
胸の中が少しだけ熱くなる。
「もう、今の私はケーキを壊す方じゃなくて、ケーキを作る方だから」
自慢げにそう返し、私は冷蔵庫に隠しておいた
お手製ケーキをテーブルに運んだ。
「……え」
ケーキを見た、颯の瞳が微かに揺れる。
「じゃーーん!お誕生日おめでとう、お兄ちゃん!」
固まる颯の隣で、私は一本ずつ、
蝋燭に火を灯した。
そして、部屋の電気を消す。
「……これも、美桜が作ってくれたのか?」
「うん。綺麗で美味しいお店のケーキみたいには上手くいかなくて……不恰好になっちゃったけど」
暗い部屋にケーキの上で輝く蝋燭だけが、
部屋を温かく幻想的に照らしていた。
私はスマホを密かに動画モードにして、
テーブルの下でこっそりと握る。
——スタンバイ、OK。
「願いごと、ちゃんと考えてから火消してね」
ゆらゆらと揺れるオレンジの光の中、
彼はただじっとケーキを見つめていた。
どこか遠い場所を眺めているような、
寂しげな眼差しで。
「……どうしたの? 食べたくない?」
「いや、違う」
颯は、わずかに視線を落として続けた。
「……家族で誕生日祝うって、あんまりなかったからさ。成績が良くても、運動ができても、親は俺のことを見ない。家に俺の居場所なんてなかった。……だから、祝われることがこんなに嬉しいものなんだなって思って」
ぽつりと、静かな声で語られた颯の過去。
それは——
完璧な王子様として生きてきた彼の、
誰も知らない孤独な裏側だった。

