闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜


慌ただしかった春、そしてあっという間に
ゴールデンウィークが明け、大学生活にも少しずつ慣れてきた頃だった。


「はい、美桜ちゃんこれ。この前貸すって言った小説」


授業が終わった後、碧くんが爽やかな笑顔で
私に一冊の本を差し出した。


それは、最近SNSで話題になっている小説。


「え、いいの? ありがとう……!」

「いーえ。結末が結構エグいけど、その分読み応えあるよ。美桜ちゃんホラー系大丈夫だっけ?」

「ちょっと怖がりだけど……この本、気になってたから楽しみ!すぐ読んで返すね……!」


(さりげなく話してこと、覚えててくれたんだ……嬉しい)


緩む口元を誤魔化しながら、カバンにしまおうとしたその時。


「あのさ、今夜大学の仲間たちでタコパやろうって話してるんだけど……美桜ちゃんもどう?」

「……タコパ?」


碧くんからの突然の誘い。
そして、「タコパ」というなんだか大学生っぽい響きに、胸が弾んだ。


けれど、同時に颯の顔が脳裏に過ぎる。


(お兄ちゃん、きっと心配するだろうな……。でも今日は、ゼミで遅くなるって言ってたし、ちょっとくらいなら平気かな……)


「うん、私も参加したい!」


そう返すと、碧くんがほっとしたように笑う。


「よかった。……場所、俺ん家でもいいんだけどさ、狭いし今散らかってて。どうしようかなって」

「そっか。場所か……」

「……そういえば美桜ちゃんの部屋、結構広いって言ってたよね? 迷惑じゃなきゃ、みんなで行ってもいい?」

「えっ、私の部屋!?」


その軽いノリに少し驚きながらも、
期待に満ちたように輝く瞳に見つめられ、

頷くことしかできなかった。


「……あ、うん、大丈夫だよ。ちょうど部屋も片付けたとこだし……!」


こうして、「初めてのタコパ」が
私の部屋で開催されることになった——。