「久遠先生を、初療室へ!CT、外科当直コール!」
白い廊下を、ストレッチャーが滑るみたいに走っていく。
私はその後を追いかけたけれど、オペ室の手前で看護師さんに肩を止められた。
「ご家族ですか」
「ち、違います。事故現場に居合わせて……」
「状況説明、あとでお願いします。こちらで対応しますので」
そう言われても、足が床に縫いつけられたみたいに動かなかった。
さっきまで私の手首をつかんでいた指の冷たさが、まだ皮膚に残っている。
自動ドアの向こうでは、濡れたスーツを切り開かれた怜央が、眩しいほど白い照明の下に置かれていた。額の傷、腹部に当てられるエコー、次々飛ぶ短い指示。
「血圧低下。腹腔内出血の疑い。輸血準備」
「頭部CTも急いで」
オペ室のドアが閉まると、残された私は、ようやく自分が全身ずぶ濡れだと思い出した。
髪から水が落ちて、足元に小さな水たまりを作っている。
看護師さんがタオルを持ってきてくれて、事情聴取のためにと待合の端へ案内された。
「少しお待ちください。救急隊からも警察からもお話があると思います」
「……はい」
タオルを握りしめたまま椅子に座る。
消毒液の匂いがする。
白い壁。蛍光灯。遠くから聞こえる足音と電子音。
病院という場所は、いつだって時間の流れ方が少しおかしい。
ぼんやりしていると、古い記憶が勝手によみがえった。
白い廊下を、ストレッチャーが滑るみたいに走っていく。
私はその後を追いかけたけれど、オペ室の手前で看護師さんに肩を止められた。
「ご家族ですか」
「ち、違います。事故現場に居合わせて……」
「状況説明、あとでお願いします。こちらで対応しますので」
そう言われても、足が床に縫いつけられたみたいに動かなかった。
さっきまで私の手首をつかんでいた指の冷たさが、まだ皮膚に残っている。
自動ドアの向こうでは、濡れたスーツを切り開かれた怜央が、眩しいほど白い照明の下に置かれていた。額の傷、腹部に当てられるエコー、次々飛ぶ短い指示。
「血圧低下。腹腔内出血の疑い。輸血準備」
「頭部CTも急いで」
オペ室のドアが閉まると、残された私は、ようやく自分が全身ずぶ濡れだと思い出した。
髪から水が落ちて、足元に小さな水たまりを作っている。
看護師さんがタオルを持ってきてくれて、事情聴取のためにと待合の端へ案内された。
「少しお待ちください。救急隊からも警察からもお話があると思います」
「……はい」
タオルを握りしめたまま椅子に座る。
消毒液の匂いがする。
白い壁。蛍光灯。遠くから聞こえる足音と電子音。
病院という場所は、いつだって時間の流れ方が少しおかしい。
ぼんやりしていると、古い記憶が勝手によみがえった。



