【改稿版】記憶を失くした御曹司と偽りの妻

翌日の午後、御堂に呼ばれて病院の特別室へ向かった。

「面会は十分だけにしてください」

廊下でそう言われて、私は思わず立ち止まる。

「……そんなに、状態が悪いんですか」

「逆です。良すぎる」

御堂はいつもの無表情で眼鏡を押し上げた。

「記憶が、ほぼ戻りました」

その一言で、喉の奥がきゅっと縮んだ。

うれしいはずなのに、素直に息が吸えない。
たぶん私は、次に会う怜央がどんな顔をしているのか、もうわかってしまっていた。