【改稿版】記憶を失くした御曹司と偽りの妻

オペ室へ入る直前、怜央が一度だけ振り返った。
術着に身を包んだ姿は、家で見る彼とはまるで違う。
甘さなんて一片もない。
鋭くて、静かで、近づきがたい。

なのに、その視線は私を見つけると少しだけやわらいだ。

「終わったら連絡する」

ただそれだけ。
でも、私には十分だった。

私は小さく頷く。

「待ってます」

怜央は何も言わなかった。
ただ短く頷いて、白い扉の向こうへ消えた。