「愛している」
思考が止まった。
いや、正確には、止まってくれたほうが楽だった。
病室の空気は静かなのに、私の心臓だけが救急搬送されそうなくらいうるさい。
「……そういうの、軽々しく言わないでください」
やっと絞り出した声は、情けないくらい掠れていた。
怜央は、少しだけ眉を寄せる。
「妻に愛していると言うのが、軽々しいのか?」
「私は、その……!」
妻じゃない。
いや契約上は妻だけど、そういうことじゃない。
自分で自分の立場がわからなくなって、言葉がぐちゃぐちゃになる。
すると怜央は、繋いだままの私の手をほんの少し引き寄せた。
「困らせたいわけじゃない。ただ……君を見ると、妙に安心する。頭の中は空っぽなのに、君だけは失いたくないと思う」
まっすぐすぎる。
記憶喪失って、人をここまで無防備にするものなんだろうか。
冷たい名医だったはずの人が、こんな顔をするなんて、取材した頃の私に言っても絶対信じない。
「また来てくれるか」
そんなふうに聞かれて、嫌だなんて言えるわけがなかった。
「……来ます」
答えた瞬間、怜央の目元がわずかにほどけた。
笑った、というほどではない。
でも、あれを笑っていないと言い張るのは無理があるくらい、きれいにやわらいだ。
「よかった」
それだけで、心臓がキャパオーバーした。
思考が止まった。
いや、正確には、止まってくれたほうが楽だった。
病室の空気は静かなのに、私の心臓だけが救急搬送されそうなくらいうるさい。
「……そういうの、軽々しく言わないでください」
やっと絞り出した声は、情けないくらい掠れていた。
怜央は、少しだけ眉を寄せる。
「妻に愛していると言うのが、軽々しいのか?」
「私は、その……!」
妻じゃない。
いや契約上は妻だけど、そういうことじゃない。
自分で自分の立場がわからなくなって、言葉がぐちゃぐちゃになる。
すると怜央は、繋いだままの私の手をほんの少し引き寄せた。
「困らせたいわけじゃない。ただ……君を見ると、妙に安心する。頭の中は空っぽなのに、君だけは失いたくないと思う」
まっすぐすぎる。
記憶喪失って、人をここまで無防備にするものなんだろうか。
冷たい名医だったはずの人が、こんな顔をするなんて、取材した頃の私に言っても絶対信じない。
「また来てくれるか」
そんなふうに聞かれて、嫌だなんて言えるわけがなかった。
「……来ます」
答えた瞬間、怜央の目元がわずかにほどけた。
笑った、というほどではない。
でも、あれを笑っていないと言い張るのは無理があるくらい、きれいにやわらいだ。
「よかった」
それだけで、心臓がキャパオーバーした。



