【改稿版】記憶を失くした御曹司と偽りの妻

原稿は無事に通った。
久遠総合病院の待合ラウンジのテーブルに、出来上がった誌面が積まれているのを見つけたとき、私は少しだけ立ち止まった。

ページをめくる。
見出しは編集部がつけたものだけれど、本文の一行目にはちゃんと私の言葉が残っていた。

――奇跡と呼ばれる結果の裏側で、彼は静かに工程を残していく。

その下にある署名は、桐生梨音。
でも、その帰る場所には、久遠怜央がいる。