【改稿版】記憶を失くした御曹司と偽りの妻

「おかえりなさい」

帰宅すると、すでに帰っていた怜央が出迎えてくれた。

「……ちょっと!さっきの取材!公の久遠先生はどこへ行ったんですか」

「撮影前に帰っちゃったみたいだね」

怜央は私の目の前まで来ると、当然みたいに言った。

「今は完全に夫モード」

その言い方。
ほんとうにずるい。

「今日の質問、よかった。公私を混ぜずに、でも核心をついていた」

「取材対象からそんな講評もらうの、緊張するんですけど」

そう言うと、怜央は私の左手を取って、薬指の指輪へ親指でそっと触れた。

「お疲れさま、梨音」

ほんとうに心臓に悪い。
公の顔は冷たくて、二人きりだと甘い。
この人のギャップには、結婚して三か月たっても慣れない。