祝。アフディーとイリオネスの冒険

 ――チック、タック。チック、タック。

 規則正しく、けれどどこか急き立てるような、時を刻む音。  
 静止したはずの廃墟の中で、それだけが命を宿しているかのように脈打っています。

「何じゃ……? お城が呼吸しておるのか?」

「時計……の音に聞こえます。どなたか、中にいらっしゃるのでしょうか」

 二人は扉の前で、そっと立ち尽くしました。好奇心と、それを上回る得体の知れない不安が、二人の胸に静かに広がります。  

 扉を開けるのをためらう二人の前で、音は次第に大きく、力強く、まるで呼びかけるように空気を震わせ始めていました。

 二人は顔を見合わせ、ひとつ大きく息を呑むと、重い扉をそっと押し開けました。

 ギギィ……と錆びついた蝶番(ちょうつがい)が静かに声を上げ、閉ざされていた古の空気が、ふわりと流れ出します。

 室内には、高い天窓から一筋の淡い光が、祈りのように差し込んでいました。
 その光に照らし出された左右の壁は、天井の闇に届くほどの巨大な書棚で埋め尽くされています。  

 そこには、背表紙の文字も読めぬほど古びた書物が、数千年の沈黙を大切に守るように、ぎっしりと並んでいるのでした。

「なんじゃ。見かけこそ城じゃが、中は小さな部屋がひとつきりか」

「そうですね。お城というよりは……まるで誰かの『書斎』に迷い込んでしまったようです」