祝。アフディーとイリオネスの冒険

 空からは、再び『さよならを告げるカタツムリ』がアフディーの元へと舞い戻ってきました。

 彼女がそれを優しく手に乗せると、幸せそうに寄り添い合う織姫と彦星の姿は、溢れんばかりの光の中に溶け込み、静かに消えていきます。

 ……ふと気がつくと、そこは小さな窓から淡い月明かりが差し込む、元の書斎で。

 先ほどまでそこにいたはずのフクロウの姿はどこにもなく、ただ、時を刻むことを止めた柱時計が、埃をかぶったまま静かに二人を見つめているのでした。

 書斎の静寂は、まるで長い年月、この場所だけが世界から切り離されていたかのような、不思議な安らぎに満ちています。

 本の最後には、一節の言葉が。

 それは文字でありながら、まるで二人に語りかけ、包み込むような温かな響きを持ってるのでした。

『聞いて、彦星。星の時計よりもずっと近くで、私たちの鼓動が刻まれているわ。ほら、トクトクって。宇宙が回るリズムより、この小さな音の方が、今の私にはずっと力強いの』

 アフディーはその一文を読み終えると、あろうことか自分が「一本取られた」のだと気づき、愉快そうに微笑むのでした。