祝。アフディーとイリオネスの冒険

 織姫もまた『何かにさよならを告げるとき』をその胸に深く刻み込み、琴に鋭く爪を当てました。

 その顔から、先ほどまでの迷いは消え去っていました。

 そこにあるのは、真剣な眼差しでただ一心に音を紡ぐ姿。 誰もが彼女に求めてきた「優雅さ」や「気品」からは程遠い……けれど、誰よりも『愛すること』に一生懸命な、一人の女性がそこにいました。

 時折、音が外れ、そのたびにテンポは激しく乱れます。

 けれども、その不格好で、不完全で、けれど熱い想いがこもった調べは、眩い光となって銀河の隅々まで駆け巡っていくのでした。

 その調べはアンドロメダ銀河を突き抜け、マゼラン銀河の果てまで届きます。カシオペアにペルセウス……全宇宙を揺るがしながら、彼女の音は響き渡りました。

 宇宙の隅々までを震わせたその音は、決してお世辞にも美しいと言えるものではありません。

 音は外れ、リズムはガタガタに崩れ、ひどく歪なものでした。

 ですが、その「不格好な音」が届いた瞬間。 東のほとりで沈黙を守っていた金牛星の耳が、何かに呼応するように、ぴくりと動いたのでした。

「……何よ、この下手くそな調べ。天女のくせに、格好ひとつつけられないの?」

 金牛星は鼻で笑おうとしましたが、なぜか涙が溢れて止まりませんでした。