祝。アフディーとイリオネスの冒険

 織姫の柔らかな声と優しい眼差しに触れると、アフディーはすっかり安心してしまい、先ほどまでの装いを綺麗さっぱり忘れてしまいました。

「そうですか。西のほとりでございますか。ほっほっほっほっ……。……でも、そんなところで、一体何をしているのじゃ?」

 織姫は静かに目を閉じ、祈るように手を胸に当てると、紡ぎ出す言葉を慈しむように語り始めました。

「私は一年中、神様たちのために着物の綻びを直しております。……けれど過去に、ひとりの男性に恋をしてしまい、その方と過ごす日々に溺れ、いつしか仕事の手を止めてしまいました。二人はその罰として、神様に引き裂かれたのです」

 遠い日の記憶を辿るように、織姫は言葉を続けます。

「でも今日。ようやくこの場所、『大きな笹の木』がそびえるこの場所で、あの方と再会できるはずだったのですが……」

 織姫は力なく肩を落とし、寂しそうに目の前の琴を見つめました。

「あの方を呼ぶために必要な、この琴。その弦が切れてしまい、もう音を奏でることができないのです」

 横たわる琴の、無残に跳ねた弦を見つめた後、アフディーと『食いしん坊のうさぎ』たちは、言葉を失って顔を見合わせていました。