車内で浩平くんと色々話した。仕事のこと、美咲先輩のこと、趣味の話、そして相原さんの話も……。
相原さんの話になった途端、それまでとは違って黙って話を聞いてくれる浩平くんについ気が緩む。
「美咲先輩も友達も『諦めるな、頑張れ』って言ってくれて、その言葉を励みに頑張ろうと思ったんだけど、でも今朝の相原さんと彼女さんの姿を見たら、もう無理かなって気がしてきちゃった」
「……うん」
「二人で並んでるとすごくお似合いで……私なんか全然敵わないなって」
「……そんなことねぇよ。ひよりちゃんだって、十分可愛いし」
その言葉は優しすぎて、お世辞だと分かってても胸の奥にじんわり沁みる。
「ありがと。ごめんね、なんだかグチグチ言っちゃって」
「いや、構わねぇよ」
普段は男性とうまく話せないのに、浩平くんには気づけば何でも話してしまう。歳が近いから? それとも美咲先輩の弟だから? 理由は分からないけど、彼と一緒にいると不思議と落ち着いた。
「なんか、浩平くんと一緒にいると落ち着くな……」
心の声が、思わず口から漏れてしまった。
「あのさっ!」
信号で止まったタイミングで浩平くんがこちらを見て、言いかける。
「うん、何?」
「~~~っ! ……いや、なんでもねぇ」
飲み込んだ言葉の代わりに、視線をそらす浩平くん。
(どうしたんだろ……? あ、もしかして愚痴りすぎたかな。やば、完全にグチグチ女じゃん私)
それ以上は口を開けず、車内には道案内以外の会話がなくなった。浩平くんも何か考えているようだったが、結局それを言葉にすることはなかった。
***
マンション前に到着すると、また運転席から回ってドアを開けてくれる。やっぱり優しいな、この人……。見た目はやんちゃそうなのに、こういうところはすごく気が利く。
「送ってくれてありがとう。気を付けて帰ってね」
「おう、ひよりちゃんも早く部屋入って休みな。あ、あと姉貴が心配してるだろうから、一応連絡入れてやって」
言われて笑顔で頷く。
「うん、そうだね。そうする」
じゃあ、と別れてマンションに入ろうとすると、後ろから呼び止められた。
「あのさ!」
「?」
「もしそんなに辛いなら、無理に頑張らなくてもいいと思うぜ」
「え……」
「……前みたいに泣いてる顔よりさ。今日みたいに笑ってる顔の方が、ずっといいよ」
「浩平くん……」
優しい顔でそう言われて、何も言葉を返せなかった。
「……もし、さ。すっきりしたいなら連絡くれたら、俺のバイクに乗せてやるよ。スカッとするぜ!」
ニッと笑って言ってくれた浩平くんの優しさに、心が温まった。
「うん、その時はお願いしよっかな!」
「おう!」
その後、一応渡しとくと言って自分の連絡先を渡してくれた。
***
浩平くんと別れて部屋のドアを閉めた瞬間、張りつめていた糸がぷつりと切れたように、全身から力が抜けた。言われた通り、美咲先輩に連絡を入れると、そのまま這うようにしてベッドまで行った。
「はあ……」
ため息とともに、ふかふかの布団に倒れこむ。と同時にふと浮かんだのは、相原さんの冷たい横顔。胸の奥が、きゅっと掴まれたみたいに痛む。
(何か嫌われるようなこと、しちゃったかな……)
それともただ単に、恋人がいるのにもう私と一緒に出勤するのが嫌になったんだろうか。
考えれば考えるほどわからなくなる。私はやっぱり、相原さんのこと諦めた方がいいんだろうか……。
まぶたを閉じても答えは見つからないまま。胸の痛みだけが、静かな部屋に残っていた。
相原さんの話になった途端、それまでとは違って黙って話を聞いてくれる浩平くんについ気が緩む。
「美咲先輩も友達も『諦めるな、頑張れ』って言ってくれて、その言葉を励みに頑張ろうと思ったんだけど、でも今朝の相原さんと彼女さんの姿を見たら、もう無理かなって気がしてきちゃった」
「……うん」
「二人で並んでるとすごくお似合いで……私なんか全然敵わないなって」
「……そんなことねぇよ。ひよりちゃんだって、十分可愛いし」
その言葉は優しすぎて、お世辞だと分かってても胸の奥にじんわり沁みる。
「ありがと。ごめんね、なんだかグチグチ言っちゃって」
「いや、構わねぇよ」
普段は男性とうまく話せないのに、浩平くんには気づけば何でも話してしまう。歳が近いから? それとも美咲先輩の弟だから? 理由は分からないけど、彼と一緒にいると不思議と落ち着いた。
「なんか、浩平くんと一緒にいると落ち着くな……」
心の声が、思わず口から漏れてしまった。
「あのさっ!」
信号で止まったタイミングで浩平くんがこちらを見て、言いかける。
「うん、何?」
「~~~っ! ……いや、なんでもねぇ」
飲み込んだ言葉の代わりに、視線をそらす浩平くん。
(どうしたんだろ……? あ、もしかして愚痴りすぎたかな。やば、完全にグチグチ女じゃん私)
それ以上は口を開けず、車内には道案内以外の会話がなくなった。浩平くんも何か考えているようだったが、結局それを言葉にすることはなかった。
***
マンション前に到着すると、また運転席から回ってドアを開けてくれる。やっぱり優しいな、この人……。見た目はやんちゃそうなのに、こういうところはすごく気が利く。
「送ってくれてありがとう。気を付けて帰ってね」
「おう、ひよりちゃんも早く部屋入って休みな。あ、あと姉貴が心配してるだろうから、一応連絡入れてやって」
言われて笑顔で頷く。
「うん、そうだね。そうする」
じゃあ、と別れてマンションに入ろうとすると、後ろから呼び止められた。
「あのさ!」
「?」
「もしそんなに辛いなら、無理に頑張らなくてもいいと思うぜ」
「え……」
「……前みたいに泣いてる顔よりさ。今日みたいに笑ってる顔の方が、ずっといいよ」
「浩平くん……」
優しい顔でそう言われて、何も言葉を返せなかった。
「……もし、さ。すっきりしたいなら連絡くれたら、俺のバイクに乗せてやるよ。スカッとするぜ!」
ニッと笑って言ってくれた浩平くんの優しさに、心が温まった。
「うん、その時はお願いしよっかな!」
「おう!」
その後、一応渡しとくと言って自分の連絡先を渡してくれた。
***
浩平くんと別れて部屋のドアを閉めた瞬間、張りつめていた糸がぷつりと切れたように、全身から力が抜けた。言われた通り、美咲先輩に連絡を入れると、そのまま這うようにしてベッドまで行った。
「はあ……」
ため息とともに、ふかふかの布団に倒れこむ。と同時にふと浮かんだのは、相原さんの冷たい横顔。胸の奥が、きゅっと掴まれたみたいに痛む。
(何か嫌われるようなこと、しちゃったかな……)
それともただ単に、恋人がいるのにもう私と一緒に出勤するのが嫌になったんだろうか。
考えれば考えるほどわからなくなる。私はやっぱり、相原さんのこと諦めた方がいいんだろうか……。
まぶたを閉じても答えは見つからないまま。胸の痛みだけが、静かな部屋に残っていた。


