***
美咲先輩と玄関前で別れて、浩平さんと二人で歩く。
「あ、駐車場こっちっス」
言われて後を付いて行く。
「あの……」
「え?」
「後ろ歩かれると倒れてないか心配になるんで、隣歩いてもらっていいっスか?」
「あ、はい……」
慌てて隣に並ぶ。
「あ、あと俺に敬語とか使わなくていいっすよ。姉貴の後輩さんに敬語使われるのも、なんか落ち着かないんで」
「え、でも私の方が年下だと思いますし、そんなわけにも……」
「歳いくつっすか? あ、年齢答えるの嫌だったら、別に無理に答えてくれなくていいんスけど」
年齢くらいなら別に気にならない。
「24です」
「俺は23。一個違いか」
ニカッと笑うと、ちらりと八重歯が見えた。前は気づかなかったけど、笑うとちょっと可愛い。……なんて本人には絶対言えないけど。
「じゃああんまり変わらないし、お互いに敬語はなしにしない?」
提案すると「俺はその方が楽だから嬉しいけど……いいの?」聞かれて頷く。
「私もその方が楽だから」
「あー、良かった。実は敬語ってあんま使わねぇから、肩こるんだよなあ」
さっきより柔らかい笑顔。距離がほんの少し縮まった気がした。
「気を遣わせちゃってごめんね。この間も傘借りちゃったし、今日もわざわざ送ってもらうことになっちゃって……」
申し訳なくなって謝るが、彼は肩をすくめて笑った。
「別にそんなのいいって。姉貴に言われなくても傘は貸しただろうし、今日は仕事が急に休みになっただけだから。そんな気にすんな」
大したことでもないという風に、さらっと言ってくれる。見た目とは裏腹に本当に優しい人なんだろう。意外と優しいとこ、美咲先輩に似てるかも。
「だいたい、そんなことくらいで申し訳なく思う必要なんかないって。姉貴なんかもっとひどいんだぜ。俺のことなんて呼べばいつでも飛んでくる、魔法の壺くらいにしか思ってねぇんだから」
頭の中に、壺から飛び出す浩平くんの姿が浮かんでしまった。
「ぷっ……あはは! 魔法のツボって言いすぎだよ~!」
「いやいやマジで。姉貴にひよりちゃんの爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいだよ」
おかしくて、笑いが止まらない。肩の力が抜けて、自然に笑い声がこぼれていた。そんな私を見ながら、浩平くんが小さく「……良かった」って言った。
「え?」
「いや、この前も暗い顔してたし、今日も会った時は元気なかったからさ。やっと笑った顔が見れたと思って」
頭の後ろで腕を組みながらにこにこ笑う彼を見て、思い返した。確かに前回も今回も、浩平くんの前で笑ったのは今が初めてだ。……というか、ここ最近で笑ったのは本当に久しぶりだった。
「ありがとう……」
お礼を言うと浩平くんがキョトンとした顔でこっちを見てる。
「なんでお礼?」
「最近、落ち込むことばっかりで全然笑えてなかったんだ。でも……浩平くんと話してたら、気づいたら笑ってた。だから、ありがとう」
笑顔でお礼を伝えると、浩平くんは顔を赤くしてそっぽを向きながらぽつりと呟く。
「……その笑顔は反則だろ」
「今、何か言った?」
「いや、なんでも。駐車場、ここ」
案内された先には、いかにも「俺を見ろ!」と言わんばかりの真っ赤なスポーツカーが停まっていた。
(え、これ乗るの……?)
多分私の顔に出ていたんだろう。浩平くんが慌てて手を振る。
「ち、違っ、違うからなっ! これ俺の車じゃねぇから! 先輩のだから!」
聞くと、普段はバイクを乗っているらしい。今日は美咲先輩に言われて、人を送るために車を急遽借りてきたのだそう。わざわざ申し訳ない。
「ん」
助手席のドアを開けて、乗車を促してくれる。
「あ、ありがと……」
見た目とは裏腹にジェントルマンな浩平くんに、ドキッとしてしまった。
運転席に乗り込むと、ゆっくりと車が動き出した。
「気分悪くなったりしたら、すぐ言ってくれよ。無理だけはすんな」
「はーい」
言葉は乱暴だけど、体調を気遣ってくれる優しさが身に染みた。
美咲先輩と玄関前で別れて、浩平さんと二人で歩く。
「あ、駐車場こっちっス」
言われて後を付いて行く。
「あの……」
「え?」
「後ろ歩かれると倒れてないか心配になるんで、隣歩いてもらっていいっスか?」
「あ、はい……」
慌てて隣に並ぶ。
「あ、あと俺に敬語とか使わなくていいっすよ。姉貴の後輩さんに敬語使われるのも、なんか落ち着かないんで」
「え、でも私の方が年下だと思いますし、そんなわけにも……」
「歳いくつっすか? あ、年齢答えるの嫌だったら、別に無理に答えてくれなくていいんスけど」
年齢くらいなら別に気にならない。
「24です」
「俺は23。一個違いか」
ニカッと笑うと、ちらりと八重歯が見えた。前は気づかなかったけど、笑うとちょっと可愛い。……なんて本人には絶対言えないけど。
「じゃああんまり変わらないし、お互いに敬語はなしにしない?」
提案すると「俺はその方が楽だから嬉しいけど……いいの?」聞かれて頷く。
「私もその方が楽だから」
「あー、良かった。実は敬語ってあんま使わねぇから、肩こるんだよなあ」
さっきより柔らかい笑顔。距離がほんの少し縮まった気がした。
「気を遣わせちゃってごめんね。この間も傘借りちゃったし、今日もわざわざ送ってもらうことになっちゃって……」
申し訳なくなって謝るが、彼は肩をすくめて笑った。
「別にそんなのいいって。姉貴に言われなくても傘は貸しただろうし、今日は仕事が急に休みになっただけだから。そんな気にすんな」
大したことでもないという風に、さらっと言ってくれる。見た目とは裏腹に本当に優しい人なんだろう。意外と優しいとこ、美咲先輩に似てるかも。
「だいたい、そんなことくらいで申し訳なく思う必要なんかないって。姉貴なんかもっとひどいんだぜ。俺のことなんて呼べばいつでも飛んでくる、魔法の壺くらいにしか思ってねぇんだから」
頭の中に、壺から飛び出す浩平くんの姿が浮かんでしまった。
「ぷっ……あはは! 魔法のツボって言いすぎだよ~!」
「いやいやマジで。姉貴にひよりちゃんの爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいだよ」
おかしくて、笑いが止まらない。肩の力が抜けて、自然に笑い声がこぼれていた。そんな私を見ながら、浩平くんが小さく「……良かった」って言った。
「え?」
「いや、この前も暗い顔してたし、今日も会った時は元気なかったからさ。やっと笑った顔が見れたと思って」
頭の後ろで腕を組みながらにこにこ笑う彼を見て、思い返した。確かに前回も今回も、浩平くんの前で笑ったのは今が初めてだ。……というか、ここ最近で笑ったのは本当に久しぶりだった。
「ありがとう……」
お礼を言うと浩平くんがキョトンとした顔でこっちを見てる。
「なんでお礼?」
「最近、落ち込むことばっかりで全然笑えてなかったんだ。でも……浩平くんと話してたら、気づいたら笑ってた。だから、ありがとう」
笑顔でお礼を伝えると、浩平くんは顔を赤くしてそっぽを向きながらぽつりと呟く。
「……その笑顔は反則だろ」
「今、何か言った?」
「いや、なんでも。駐車場、ここ」
案内された先には、いかにも「俺を見ろ!」と言わんばかりの真っ赤なスポーツカーが停まっていた。
(え、これ乗るの……?)
多分私の顔に出ていたんだろう。浩平くんが慌てて手を振る。
「ち、違っ、違うからなっ! これ俺の車じゃねぇから! 先輩のだから!」
聞くと、普段はバイクを乗っているらしい。今日は美咲先輩に言われて、人を送るために車を急遽借りてきたのだそう。わざわざ申し訳ない。
「ん」
助手席のドアを開けて、乗車を促してくれる。
「あ、ありがと……」
見た目とは裏腹にジェントルマンな浩平くんに、ドキッとしてしまった。
運転席に乗り込むと、ゆっくりと車が動き出した。
「気分悪くなったりしたら、すぐ言ってくれよ。無理だけはすんな」
「はーい」
言葉は乱暴だけど、体調を気遣ってくれる優しさが身に染みた。


