(こいつ………!)
あまりのことに言葉が出ない。
「だから家の場所を知っていたのか」
「すまん」
「それが貴族の礼儀ってやつなんだな?」
ミハエルは怒りのあまり、声に軽蔑を込めた。
この編入生は、豪胆で率直に見えてその実、随分後ろ暗いやり方をするではないか。
「じゃあ、今日からは堂々とお前についていく」
「…………っ!」
反省どころか開き直るアレクサンダーに、ミハエルは言葉を失った。
(なんて奴だ)
ミハエルはあまりのことに、思わず両手を握りしめワナワナと震えていた。
(こんな奴にかまっている場合ではない)
アレクサンダーを振り切るつもりで黙って足早に歩き出した。
アレクサンダーはなおもミハエルに歩調を合わせてすぐ後ろをついてくる。
「ついてくるな、恥知らず、とんま、ろくでなし!」
ミハエルは振り向きもせず、思いつく罵り言葉をまくしたてる。
アレクサンダーはおかまいなしに、後ろで何かぶつぶつ言っている。
「制帽を目深にかぶるのはそういうことだったんだな」
そして、同情の念を込めながら話しかけてくる。
「大変そうだな」
「そういう君だって」
「ん?」
「いや、何でもない。」
うっかり口をきいてしまったことを悔いる。
「で、どこまでついてくるつもりなんだ?」
ミハエルは振り返って、嫌悪感を露わにする。
「お前んちの小屋の中まで」
ミハエルはその言葉を聞いて、心底うんざりした。
くるりとアレクサンダーの方へ向き直る。
「いい加減にしてくれよ」
思わず声を荒げた。
「帽子のことを教えたら帰るって言ったろ」
「言ってない」
思い返すとたしかにアレクサンダーはニコニコとほほ笑みを浮かべていただけだ。
「帰る」とは一言も言っていない。
やられた。
ミハエルはぐっと言葉を飲みこむ。
そして、はぁ、とため息をついた。
「昨日のことを誰にも言いふらさないでいてくれたことには感謝する。でも」
ミハエルは語気を強める。
「僕の知らないうちに後をつけ、敷地や小屋にまで勝手に入ってきて、あんまりだと思わないか」
「俺は、お前のことをもっと知りたいし、仲良くなりたいと思っている」
アレクサンダーからの謝罪を期待していたミハエルは、彼から真っすぐな瞳を向けられ、ふいを突かれてしまった。
ミハエルはしばらくその場で黙り込んでいたが、やがて薄い唇を開いた。
「僕は君と一緒に帰るつもりはない。
僕のことを知ってもらう必要もなければ、君と仲良くなるつもりもない」
そして自宅への方向に向き直ってスタスタと歩き始めた。
アレクサンダーは、なおもついてくる。
「お前に用事があるんだよ」
「用事って何だよ。今ここで言え」
ミハエルは苛立ちながら要件を促す。
「お前んちで教えてやる」
「なんでだよ、ここで言えってば!」
声を荒げたところで家の前に辿りついてしまった。
ミハエルはため息をつく。
(やっぱり、強引な奴だ)
しかし、昨日のように小屋の中まで踏み入ってこられては困る。
(ここは撒くしかない)
ミハエルは決意した。
裏門のある小路に入ると、ミハエルはアレクサンダーの一瞬の隙を突いて裏門まで全速力で走りだした。
アレクサンダーを締め出さそうと、おもむろに門に手をかける。
「うわっ」
ミハエルは叫んだ。
後ろにはアレクサンダーがぴったりとくっついているではないか。
アレクサンダーは門の隙間に体を滑り込ませようとしている。
ミハエルは絶対に入れるものかと、力任せにぐいぐいと門を押し返す。
アレクサンダーは裏門に体を挟まれたままビクともしない。
それどころか門を押さえつけて入りこもうとしてくる。
ミハエルは必死に押し返す。
しばらく二人ですったもんだしているうちに、体躯の良いアレクサンダーがグイッと一歩踏み込んできた。
それを突破口に、上半身をねじ込んでくる。
ここへきて、ミハエルは怯んでしまった。
強引なアレクサンダーに恐怖すら覚える。
ミハエルはつい門にかける手を緩めてしまった。
その隙に、アレクサンダーは完全に敷地内に体を滑り込ませた。
ゼェゼェと息をしながら、ミハエルはアレクサンダーをキッと睨み付けた。
アレクサンダーは、勝ち誇った顔でニヤリとミハエルを見下ろしている。
ミハエルは、あまりのことに声も出なかった。
彼の運動神経の良さに加えて、その執念深さは一体なんなのだ。
「どういうつもりなんだよ」
「だって、俺らって友だちだし」
アレクサンダーはしれっと答える。
「ク、クソが……」
ミハエルはあまりの出来事に、ワナワナと口から罵りの言葉が漏れ出るのを止められなかった。
彼はどうかしている。
こんなふうに足を踏み入られてしまっては、目の前の強引な、自称友だちとやらを招き入れざるをえなくなってしまったではないか。
ミハエルは顔を歪ませながら、悔しまぎれに言い放った。
「もてなさないからな!」
あまりのことに言葉が出ない。
「だから家の場所を知っていたのか」
「すまん」
「それが貴族の礼儀ってやつなんだな?」
ミハエルは怒りのあまり、声に軽蔑を込めた。
この編入生は、豪胆で率直に見えてその実、随分後ろ暗いやり方をするではないか。
「じゃあ、今日からは堂々とお前についていく」
「…………っ!」
反省どころか開き直るアレクサンダーに、ミハエルは言葉を失った。
(なんて奴だ)
ミハエルはあまりのことに、思わず両手を握りしめワナワナと震えていた。
(こんな奴にかまっている場合ではない)
アレクサンダーを振り切るつもりで黙って足早に歩き出した。
アレクサンダーはなおもミハエルに歩調を合わせてすぐ後ろをついてくる。
「ついてくるな、恥知らず、とんま、ろくでなし!」
ミハエルは振り向きもせず、思いつく罵り言葉をまくしたてる。
アレクサンダーはおかまいなしに、後ろで何かぶつぶつ言っている。
「制帽を目深にかぶるのはそういうことだったんだな」
そして、同情の念を込めながら話しかけてくる。
「大変そうだな」
「そういう君だって」
「ん?」
「いや、何でもない。」
うっかり口をきいてしまったことを悔いる。
「で、どこまでついてくるつもりなんだ?」
ミハエルは振り返って、嫌悪感を露わにする。
「お前んちの小屋の中まで」
ミハエルはその言葉を聞いて、心底うんざりした。
くるりとアレクサンダーの方へ向き直る。
「いい加減にしてくれよ」
思わず声を荒げた。
「帽子のことを教えたら帰るって言ったろ」
「言ってない」
思い返すとたしかにアレクサンダーはニコニコとほほ笑みを浮かべていただけだ。
「帰る」とは一言も言っていない。
やられた。
ミハエルはぐっと言葉を飲みこむ。
そして、はぁ、とため息をついた。
「昨日のことを誰にも言いふらさないでいてくれたことには感謝する。でも」
ミハエルは語気を強める。
「僕の知らないうちに後をつけ、敷地や小屋にまで勝手に入ってきて、あんまりだと思わないか」
「俺は、お前のことをもっと知りたいし、仲良くなりたいと思っている」
アレクサンダーからの謝罪を期待していたミハエルは、彼から真っすぐな瞳を向けられ、ふいを突かれてしまった。
ミハエルはしばらくその場で黙り込んでいたが、やがて薄い唇を開いた。
「僕は君と一緒に帰るつもりはない。
僕のことを知ってもらう必要もなければ、君と仲良くなるつもりもない」
そして自宅への方向に向き直ってスタスタと歩き始めた。
アレクサンダーは、なおもついてくる。
「お前に用事があるんだよ」
「用事って何だよ。今ここで言え」
ミハエルは苛立ちながら要件を促す。
「お前んちで教えてやる」
「なんでだよ、ここで言えってば!」
声を荒げたところで家の前に辿りついてしまった。
ミハエルはため息をつく。
(やっぱり、強引な奴だ)
しかし、昨日のように小屋の中まで踏み入ってこられては困る。
(ここは撒くしかない)
ミハエルは決意した。
裏門のある小路に入ると、ミハエルはアレクサンダーの一瞬の隙を突いて裏門まで全速力で走りだした。
アレクサンダーを締め出さそうと、おもむろに門に手をかける。
「うわっ」
ミハエルは叫んだ。
後ろにはアレクサンダーがぴったりとくっついているではないか。
アレクサンダーは門の隙間に体を滑り込ませようとしている。
ミハエルは絶対に入れるものかと、力任せにぐいぐいと門を押し返す。
アレクサンダーは裏門に体を挟まれたままビクともしない。
それどころか門を押さえつけて入りこもうとしてくる。
ミハエルは必死に押し返す。
しばらく二人ですったもんだしているうちに、体躯の良いアレクサンダーがグイッと一歩踏み込んできた。
それを突破口に、上半身をねじ込んでくる。
ここへきて、ミハエルは怯んでしまった。
強引なアレクサンダーに恐怖すら覚える。
ミハエルはつい門にかける手を緩めてしまった。
その隙に、アレクサンダーは完全に敷地内に体を滑り込ませた。
ゼェゼェと息をしながら、ミハエルはアレクサンダーをキッと睨み付けた。
アレクサンダーは、勝ち誇った顔でニヤリとミハエルを見下ろしている。
ミハエルは、あまりのことに声も出なかった。
彼の運動神経の良さに加えて、その執念深さは一体なんなのだ。
「どういうつもりなんだよ」
「だって、俺らって友だちだし」
アレクサンダーはしれっと答える。
「ク、クソが……」
ミハエルはあまりの出来事に、ワナワナと口から罵りの言葉が漏れ出るのを止められなかった。
彼はどうかしている。
こんなふうに足を踏み入られてしまっては、目の前の強引な、自称友だちとやらを招き入れざるをえなくなってしまったではないか。
ミハエルは顔を歪ませながら、悔しまぎれに言い放った。
「もてなさないからな!」
