素敵な笑顔を咲かせる君と

「おじさーん! 来たよー!」


 カランコロンという軽快な音が響いて、コーヒーの香りが鼻に纏う。


「あぁ、舞華ちゃん。いらっしゃい」


 ここは私の行きつけの喫茶店で、
 人当たりの良さそうなおじさんが個人経営をしている。

 お客さんは少ないけれど、その静かな雰囲気が一番好きだ。


「ねぇねぇ! 今日の気まぐれケーキは何?」

「気まぐれケーキは最後までわからないから気まぐれなんだよ、舞華ちゃん」

「もうすでに決まってるんでしょ?」


 そんな軽口を叩きながらカウンター席に座る。
 お客さんは私しかいない。だから、少し大きな声で話しても誰の迷惑にもならない。


「まぁ、ヒントをあげるなら君の好物ではないかな」

「ショートケーキではないかー!」


 このおじさんのショートケーキは絶品だ。
 あわよくばと思って期待したが、違っていたようだ。


「何個かあるよ。そんなに好きなら、毎回ショートケーキを頼めばいいのに」

「おじさんのケーキは全部美味しいからね。ランダムに食べられる方がお得じゃん」

「そういうものなの?」

「そういうものなの!」


 確かに私はショートケーキが一番好きだが、おじさんの作るケーキならなんでも好きだ。


「はい、どうぞ」


 しばらくして置かれたのは、少しだけ白い湯気を出しているアップルパイだった。


「アップルパイ! 久しぶりに食べる!」

「そう? ならよかったよ」

「いただきまーす! うまー!」


 おじさんは私の青色の右目を気にしないで接してくれる。
 実質この人が私の唯一の友達かもしれない。


「そういえば、舞華ちゃん」

「ん?」


 アップルパイを頬張りながら聞き返すと、おじさんはコップを拭きながら口を開いた。


「日曜日に、新しく入ったバイトが来るんだ。よかったらその日も来てくれない?
 同年代くらいのお客さんを相手にした方が、慣れやすいと思うから」


 バイトが来る。その言葉に私は耳を疑った。このお店がバイトを取っているとは知らなかった。


「どんな子? 女の子?」

「男の子だよ。舞華ちゃんと話が弾むかもしれないね」


 そう言いながら、おじさんは私がいつも頼んでいる紅茶を置いた。

 日曜日が楽しみになってきた。一体どんな子が来るのだろう。