もう存在がバレてしまったのなら、隠れる必要もない。
私は堂々と下校前にアトリエに行く。
「やっほー」
「なんで来てんですか……」
一ノ瀬くんは今日は筆を持っていなくて、
机にスケッチブックを広げて鉛筆で下書きと思われるものを書いている。
「今これ何描いてんの?」
「下書き」
「なんの?」
「なんだと思います?」
いきなりのクイズに少し戸惑ったが、顎に手を当てて考える。
「わかった! ショートケーキだ!」
「ショートケーキはこんなに縦長じゃないでしょ」
一ノ瀬くんはため息をつきながら、サラサラと鉛筆を紙の上で走らせている。
「いやでもさ、縦長のショートケーキもあるかもしれないじゃない?」
「かなり珍しい形ですよそれ」
私たちがそう談笑していると、後ろから声をかけられた。
例のセンター分けの同学年の男の子だ。
「入部する?」
「しなーい!」
なんでそんなにも入部させたがるのだろう。
名前も知らない人の言うことを聞くつもりはない。
「一ノ瀬、珍しいね。この間もこの子を見てめっちゃ驚いてたじゃん。普段寡黙なのに」
「わかる、めっちゃ静かだよね〜」
普段静かに絵を描いて、絵以外に興味なんてありませんみたいな顔をしている。
まぁその横顔が好きなのだが。
(ん?)
今何か引っ掛かることを考えたような気がする。
胸の真ん中あたりが少し苦しいような気もする。
(よし、何も考えないようにしよー)
息をゆっくりと吸って、誰にも悟られないように気持ちを落ち着かせた。
「なんで花咲先輩が普段の僕が静かなことを知ってるんですか」
「え? 見てたから」
「見てた……? 普段から?」
まじで何言ってんのみたいな顔をしている。
まぁ驚くのも無理はないかもしれない。
普段から知らない人にじっと見られていたと知れば、気持ち悪く思うだろう。
「そうそう。この子ね、冬休み前からこのアトリエのドアのところから、ずっとここを覗いてたんだよ」
「……覗き魔?」
一ノ瀬くんは引き気味に私を見ている。
そんな目で私を見ないでほしい。
「違うから。……待って違わないかも」
「違わないんかい」
彼はたまに敬語が外れる。
別に気にしていないけれど。
「私が君を見てたのは事実だからね」
「なんで?」
「だって、君かっこいいもん」
私の発言のせいか、一ノ瀬くんもセンター分けくんもピシッと固まった。
一ノ瀬くんの表情は別に変わっていないけれど、センター分けくんは大きく目を見開いて私を見つめている。
「……うん、……ん?」
一ノ瀬くんは鉛筆を見つめて言葉にならないことを言っていた。
センター分けくんは何も言わず、突っ立ったまま固まっている。
「……な、なんでそんなことを恥ずかしげもなく言えるんですか」
ゆっくりと私の方に振り向きながら、なんとも言えない表情で私を見つめている。
「え? だって実際にかっこいいじゃん」
「いやいやいやいやいや……別にそんなこたないでしょ。どこにでもゴロゴロいる顔ですよ」
「そうかなぁ。結構イケメンに分類される顔だと思うよ。もっと愛想良くしたら? モテると思うよ」
「……好きでもない女に愛想良くしたところでなんの徳があるんですか」
「そういうこと言っちゃうタイプ?」
一ノ瀬くんはため息をついて、またスケッチブックに鉛筆を置いて走らせた。
私は堂々と下校前にアトリエに行く。
「やっほー」
「なんで来てんですか……」
一ノ瀬くんは今日は筆を持っていなくて、
机にスケッチブックを広げて鉛筆で下書きと思われるものを書いている。
「今これ何描いてんの?」
「下書き」
「なんの?」
「なんだと思います?」
いきなりのクイズに少し戸惑ったが、顎に手を当てて考える。
「わかった! ショートケーキだ!」
「ショートケーキはこんなに縦長じゃないでしょ」
一ノ瀬くんはため息をつきながら、サラサラと鉛筆を紙の上で走らせている。
「いやでもさ、縦長のショートケーキもあるかもしれないじゃない?」
「かなり珍しい形ですよそれ」
私たちがそう談笑していると、後ろから声をかけられた。
例のセンター分けの同学年の男の子だ。
「入部する?」
「しなーい!」
なんでそんなにも入部させたがるのだろう。
名前も知らない人の言うことを聞くつもりはない。
「一ノ瀬、珍しいね。この間もこの子を見てめっちゃ驚いてたじゃん。普段寡黙なのに」
「わかる、めっちゃ静かだよね〜」
普段静かに絵を描いて、絵以外に興味なんてありませんみたいな顔をしている。
まぁその横顔が好きなのだが。
(ん?)
今何か引っ掛かることを考えたような気がする。
胸の真ん中あたりが少し苦しいような気もする。
(よし、何も考えないようにしよー)
息をゆっくりと吸って、誰にも悟られないように気持ちを落ち着かせた。
「なんで花咲先輩が普段の僕が静かなことを知ってるんですか」
「え? 見てたから」
「見てた……? 普段から?」
まじで何言ってんのみたいな顔をしている。
まぁ驚くのも無理はないかもしれない。
普段から知らない人にじっと見られていたと知れば、気持ち悪く思うだろう。
「そうそう。この子ね、冬休み前からこのアトリエのドアのところから、ずっとここを覗いてたんだよ」
「……覗き魔?」
一ノ瀬くんは引き気味に私を見ている。
そんな目で私を見ないでほしい。
「違うから。……待って違わないかも」
「違わないんかい」
彼はたまに敬語が外れる。
別に気にしていないけれど。
「私が君を見てたのは事実だからね」
「なんで?」
「だって、君かっこいいもん」
私の発言のせいか、一ノ瀬くんもセンター分けくんもピシッと固まった。
一ノ瀬くんの表情は別に変わっていないけれど、センター分けくんは大きく目を見開いて私を見つめている。
「……うん、……ん?」
一ノ瀬くんは鉛筆を見つめて言葉にならないことを言っていた。
センター分けくんは何も言わず、突っ立ったまま固まっている。
「……な、なんでそんなことを恥ずかしげもなく言えるんですか」
ゆっくりと私の方に振り向きながら、なんとも言えない表情で私を見つめている。
「え? だって実際にかっこいいじゃん」
「いやいやいやいやいや……別にそんなこたないでしょ。どこにでもゴロゴロいる顔ですよ」
「そうかなぁ。結構イケメンに分類される顔だと思うよ。もっと愛想良くしたら? モテると思うよ」
「……好きでもない女に愛想良くしたところでなんの徳があるんですか」
「そういうこと言っちゃうタイプ?」
一ノ瀬くんはため息をついて、またスケッチブックに鉛筆を置いて走らせた。
