超能力持ち令嬢ですが冷徹理屈屋公爵に「その力を貸してくれ」と言われて偽装結婚することになりました

ギャラリーの主であるモリスが、お薦めの美術品をざっと説明しながら店の中を案内していく。
著名なアーティストが作った美しいランプ、精緻な細工が華やかな彫像など、テオドールとシャルロットはひとつひとつ吟味した。

(どれも良くて迷ってしまうわ)

「絵画もお薦めですな。割れたりもしませんし」

モリスが次に案内したのは、絵画のコーナー。
大きな絵から卓上サイズの小さな絵、風景画から人物画まで壁いっぱいに飾られている。

「なんて美しい……」

思わず呟いたシャルロットの視線の先にあるのは、隅に飾られた油絵。

それは湖の絵だった。

アクアマリンのように煌めく水面は本物と見紛う美しさで、見ているだけで心が癒されていくようだ。

「さすがグレイヴン公爵夫人、お目が高い! これは新進気鋭の画家ミラン・ヒースが描いた、コートゥナ王国にある湖の絵だそうですよ」
「コートゥナ王国の……!?」

カティア王女の祖国であるコートゥナ王国。
テオドールとシャルロットは目を合わせた。

「テオドール様、ぴったりではないですか?」
「ああ。モリス、これを買おう」
「かしこまりました!」

モリスが壁から絵画を外して、「ご確認をお願いいたします」とシャルロットとテオドールの目の前に差し出した。

「間近で見ると一段と美しいですわ。この水面、本物の水にしか見えない……」

言いながら、シャルロットは無意識に右手の人差し指でそっと絵を撫でた。

(しまった、手袋してないのにさわっちゃった!)

すぐ指先を離そうとした瞬間。
脳裏に声が流れるーー