副社長の相手が取引先の社長の娘となれば、単なる恋愛ゴシップにとどまらない。益田証券会社との契約の透明性に疑問が持たれかねないし、公私混同があったのではと面白おかしく書かれては企業イメージに大きく関わってくる。
(副社長がそんなリスクを冒すとは思えないんだけど……)
そう考えている間にも、先ほどの記者から掲載予定の記事と写真がメールで送られてきた。赤坂にある料亭の前で撮られたという写真は遠目にも相澤と亜沙美だとわかるけれど、ふたりがただ同じ画角に映っているだけのなんの変哲もない写真だった。
これがハグやキスといった決定的な瞬間を捉えたものだったなら対応が変わっただろうが、この程度ならば【熱愛】などと書かれても信憑性はない。そもそも相澤がそんな写真を撮られることはないだろう。数々の浮名を流し、何度も週刊誌に撮られている相澤だが、企業のイメージを著しく損なうような写真だったことは一度もない。
「今回は相手が相手だし、副社長から事情を聞いてから動こう」
「了解です。法務には俺から一報入れます」
「私はミーティングルームの準備をしておきますね」
「ありがとう」
てきぱきと動くふたりを頼もしく感じていると、後ろから「あーあ」と大袈裟なため息が聞こえた。



