文乃と健が話しているのを聞きながら、野々花はいつものように相澤へと確認を取るために秘書課へ急ぎの面会を申し入れ、お相手の益田亜沙美というモデルが所属する事務所にも対応の擦り合わせをするためにアポイントを取る。
「前回の女優は俺も知ってたけど、今回のモデルは知らないな」
「健先輩、益田亜沙美を知らないんですか?」
「え、なに、そんな有名な人?」
「最近じゃあまり見かけないですけど、一時期ファッション誌とかでよく見ましたよ。恋多き女って感じで、色んなアイドルとかタレントと熱愛報道が出てたし。野々花先輩は知ってます?」
「うん。五年くらい前はファッション誌だけじゃなくてCMにも出てたよね」
整った美しい顔立ちとお嬢様育ちというキャラクターで若い女性を中心に認知されていたが、正統派モデルというよりもお騒がせタレントのような位置づけだったように思う。文乃の言う通り、過去には頻繁に『熱愛発覚』という記事で名前を見かけたし、中にはよくない噂のある男性とのスキャンダルなどもあり、正直あまりいいイメージはない。
けれど今回に限って言えば、問題はそれだけではない。
(益田亜沙美が、まさかうちと取り引きのある益田証券会社の社長の娘だったなんて)
お嬢様モデルとして有名ではあったけれど、親の会社など気にしたことはない。記者から電話で『御社とも関わりの深い企業の社長の娘さんですよね』と粘着質な声で尋ねられ、野々花は言葉に詰まってしまった。



