本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


それなのに、またしても無意味に鼓動が弾む。いちいち意識してしまう異性に免疫のない自分が恥ずかしい。

「それから、できれば役職で呼ぶのはやめてもらえるとありがたい。双子も白河だし、家では名前でいい」
「な、名前って……そんな恐れ多い……!」

いくら社外とはいえ、社長を親しげに呼ぶなんてできそうにない。両手を顔の前でぶんぶん振る野々花に、一哉はおかしそうに噴き出した。

「ははっ、恐れ多いってなに。宮部さん、会社とは随分雰囲気が違うんだな」
「そっくりそのままお返しいたします」

一哉とはそこまで仕事で接点があるわけではないけれど、オフィスでこんなに砕けた笑顔でいるところを見たことがない。

「そうか? 特別態度を変えているつもりはないんだが。それより、ほら。呼んでみて」
「えっ、いや、でも……」
「まさか、俺の下の名前知らない?」
「そっ、そんなわけないじゃないですか」
「それなら、どうぞ?」