本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


音を立てないようにゆっくりドアをしめると、野々花は脱力するようにベッドに浅く腰掛け、ふぅっと大きく息を吐き出した。

(これから二ヶ月、ここで社長と一緒に生活するんだ……)

大それたことをしているような気がするけれど、一度承諾してしまった以上もう引き返せない。

それに、居候させてもらえるのはとても助かる。焦って新居を決めなくても済むし、狭く騒がしいネットカフェで何日も夜を明かすのは正直かなり辛かった。

男性とひとつ屋根の下で暮らすという初めての体験に緊張する上、社長の自宅で本当にゆっくり休めるのかはわからないけれど、ネットカフェでは個室とはいえ一畳程度のスペースしかなく、薄い仕切り一枚挟んで隣に見知らぬ他人がいるという状況だった。それを思えば現状は高待遇すぎるほどだ。

期限付きの同居なのだから、そこまで気負うこともない。副業で住み込みのベビーシッターをしていると考えればいい。

(お世話になる分、全力で維月くんと李月くんのお世話をしよう)

野々花はそう結論付け、就寝の準備に取り掛かるのだった。