本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


そう言いながら、彼の指先が野々花の目元に伸びてくる。人差し指が目の端に触れた。長くて綺麗なのに、男性らしい大きな手だ。

「少し隈ができてる。ここ数日、眠れなかったんだろう? 部屋に案内するから、今日はゆっくり休んで」

一哉は簡単に部屋の間取りについて説明してくれた。3LDKの室内は、ひとつは寝室、もうひとつは一哉の仕事部屋にしているらしい。双子は寝室のベッドの隣に大きな布団を敷き、そこに寝かせているようだ。

案内された客間はセミダブルのベッドとハンガーラック、小さなデスクなどが置かれた八畳ほどの部屋だった。野々花のキャリーケースと百貨店で購入してもらった品々が、部屋に入ってすぐの位置にどんと置かれている。

「部屋が余ってるから客間にしてるだけで、一切使ってないしシーツも新しいものだから。基本的にこの家にあるものは好きに使っていいし、遠慮しないで好きに過ごしてほしい。明日以降、同居の簡単なルールや報酬について決めよう」
「は、はい。ありがとうございます」
「うん。おやすみ、宮部さん」
「おやすみ、なさい」

小さくぺこりと頭を下げると、一哉は穏やかに微笑み頷いて部屋を出ていった。